電気代が高くて使い続けられない

通訳を介して聞いてみると、問題のひとつは、店舗などに設置されているエアコンのほとんどが格安エアコンであることだった。ダイキンのような高性能エアコンとは異なり、格安エアコンは電力消費量が大きく、それに伴って電気代も高くなる。価格面の魅力から格安エアコンを購入してみたものの、その後の電気料金の負担に店舗が耐えられず、スイッチを入れなくなるという事例が多発していた。

加えて、格安エアコンは品質面にも問題があり、故障が起きやすい。タンザニアではメンテナンス・サービスも未成熟で、故障したときの対処はやっかいなことになる。中韓メーカーは代理店や小売店に販売したら終わりという売り切りモデルで、メンテナンス・サービスのための教育などは重視していないようだった。これに嫌気を起こしたユーザーによって、多くのエアコンが壊れたまま放置されてしまっていた。

中国・韓国メーカーのシェアが9割

ダイキンのエアコン事業はグローバルに成功しているとはいえ、アフリカ市場では苦戦しており、中韓メーカーがシェアの9割ほどを押さえている。Baridi Baridiの設立以前のタンザニアでは、ダイキンのエアコンは代理店を通じて年400台ほどがほそぼそと売られているにすぎず、専売店も傘下の販売会社も存在しなかった。

Baridi Baridiの設立に伴い、ダイキンがタンザニアに導入することにしたのは、インド工場で生産する冷房専用のエアコンである。その小売価格は低価格のモデルでも10万円程度で、これは同容量のLGやサムスンなど韓国メーカーのエアコンの1.5倍、ハイセンスやグリーなど中国メーカーのエアコンの2倍ほどの高価格である(一方で電気代は60%ほども下げられ、かつ停電が頻発するような使用環境でも故障が起きにくい仕様となっている)。

タンザニアのような新興国において、これほどの価格差はマーケティング上の大きな障壁となる。しかし、ここでダイキンが格安エアコンの投入に走ってみたところで、その先の明るい展望は開けない。ほぼ間違いなく生じるのは、中韓メーカーと価格で争うレッドオーシャンへの突入である。

ダイキンにとっての差別化のポイントは高性能・高品質である。それにともなう高価格の問題を解消できれば、その先にはブルーオーシャンが開ける。