楽天・三木谷会長に、NTT広報室は「ナンセンス」と言い放つ

楽天の三木谷浩史会長にいたっては、X(旧ツイッター)に「国民の血税で作った唯一無二の光ファイバー網を完全自由な民間企業に任せるなど正気の沙汰とは思えない。携帯含め、高騰していた通信費がせっかく下がったのに逆方向に行く最悪の愚策だと思います」とこきおろした。NTT広報室はこの投稿を引用し、「ナンセンス」と反論。SNS上で議論が巻き起こった。

楽天三木谷氏の投稿に反論するNTT広報室(2023年11月17日のNHK広報室のポストより)

さらに、全国の通信事業者など181者は連名で、自民党と総務省に「廃止反対」の要望書を提出した。NTTvs.オール通信業界の構図が鮮明になり、双方の対立はますますエスカレートしていった。

総務省と自民党通信族の巻き返し

自民党内では、総務相経験者が集う情報通信戦略調査会(会長・野田聖子元総務相)が、爆走する甘利PTに「待った」をかけた。

NTT法の廃止にともなってユニバーサルサービスも廃止となれば、地方の反発は避けられず、選挙にも影響が出かねない。「健全な通信市場の形成や外資による買収を防ぐ措置などが担保されない状況で廃止すべきではない」と、反論が相次いだ。

PTの提言は、素案では「NTT法は25年までに廃止」となっていたが、調査会の勢いに押し切られて、結局、「25年をめどに廃止」と切り変わった。「までに」と「めどに」は、わずかな違いのようにみえるが、永田町用語では「めどに」は「できれば」を意味する場合に用いられるケースが多い。事実上の空文化である。

前のめりになる経産省―商工族に対し、廃止に慎重な総務省―通信族が巻き返したともいえる。

総務省は、甘利PTの議論に急かされるかのように、8月に情報通信審議会にNTT法の見直しを諮問した。だが、12月下旬にまとめられた中間報告案は、大半が論点整理にとどまった。

NTTの島田明社長も当初、「NTT法の役割はおおむね完遂した」と廃止論の先頭に立っていたが、絶対反対の包囲網が狭まる中で「NTT法の25年廃止は、私どもが言っているわけではない」とトーンダウン、積極姿勢を大きく後退させた。

失速したNTT法廃止論

PTは12月初めに提言をまとめ、甘利座長は「NTTの完全民営化に向けて道筋ができた」と胸を張った。だが、PT発足当初の勢いは失われ、内心はいかばかりだったか。

提言は、NTT法を段階的に廃止する方針を打ち出した。

まず第1ステップとして、24年の通常国会でNTTに関する研究成果の公開義務の撤廃などの法改正を実施。次に、25年の通常国会をめどに、「ユニバーサルサービスの提供義務」などの規定を電気通信事業法に移し替えるなど「必要な措置を講じ次第、NTT法を廃止する」とした。