なぜこのタイミングで記者会見したのか?
トヨタ自動車とNTTが3月24日、業務資本提携で合意したと発表した。「資本」では相互に2000億円ずつ出資し合う本格的なものだが、肝心の「業務」は「両社間で価値観を共有し社会の発展をめざすコアなパートナーとして、住民のニーズに応じて進化し続けるスマートシティの実現をめざし、スマートシティビジネスの事業化が可能な長期的かつ継続的な協業関係を構築する」と焦点が定まらない。
日本の株式時価総額ランキングで1位と3位に君臨する巨人同士の握手だが、高揚感からは程遠い。AIなどデジタル技術の社会実装で先頭を走る中国の背中は遠のくばかりだ。
株式時価総額の2位はNTTドコモ。3月27日の終値でトヨタが約23兆円、NTTとNTTドコモの合計が約22兆円。4位のキーエンスは約8兆円。トヨタ、NTT、NTTドコモのトップ3に対する市場の評価がいかにずば抜けているかわかる。
その両グループが2000億円という大きな資金を動かしてまで「スクラムを組もう」と言うのだから、本来であれば大ニュースだ。発表当日24日の朝刊1面トップで日本経済新聞がすっぱ抜き翌日も発表記事を一面に掲載したが、他のメディアは小さな扱いにとどまった。
最初に浮かんだのは「なぜこのタイミングで」という疑問である。記者会見が開かれた24日、東京都はすでに新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大の瀬戸際にあるとされ、政府や都は「密閉、密集、密接」の“3密”を避けるよう繰り返し要望していた。しかし都内のホテルらしき場所で開かれたトヨタとNTTの記者会見はネット配信を見る限り、密室で開催され、記者の席は肘と肘がぶつかるほどの距離だった。