世界の大企業がコロナ対策を打つ中で「お花畑」の発表
トヨタの豊田章男社長は「長期的な関係を構築するには対等出資に意味がある」、NTTの澤田純社長は「この構造でGAFAに対抗する」と熱弁を振るったが、2人が感染していたら記者全員に感染しかねない距離感である。
同じ頃、テスラCEOのイーロン・マスクは中国で余剰になった人工呼吸器1255台を買い上げ、地元のカリフォルニア州に寄贈。医療用マスク5万枚をワシントン大学医学部に贈った。トランプ大統領に「グズグズするな!」とハッパをかけられたゼネラル・モーターズ(GM)は人工呼吸器メーカーのベンテック・ライフ・システムズと提携し、インディアナ州の工場で人工呼吸器の生産に乗り出した。
フォードとGEも簡易な人工呼吸器の共同開発・生産を開始している。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の中国子会社、フォックスコンも中国でウイルスに効果がある「N95」マスクの量産を始めた。生産機械まで内製する本腰の入れようだ。
世界の企業がコロナウイルスにファイティング・ポーズをとっている時に、日本を代表する2大企業は「手を取り合ってスマートシティを作ります」と「お花畑」のような発表をしたわけだ。トヨタの米国法人は27日になってようやく「米国の人工呼吸器メーカーの生産を支援する」と発表したが、出遅れ感は否めない。
お互いのスマートシティに乗り入れてデータを集めたい
3月24日の時点ですでにイタリアの死亡者数が6000人を超えていたことを考えれば、一刻を争うわけでもないスマートシティの提携発表など先送りにすべきだったが、そこは巨人同士の握手。ずうたいが大きすぎて止められなかったのだろう。
それでもあっと驚く中身の提携なら、暗いご時世に希望の光を投げかけることもできた。だが、残念ながら提携にはほとんど新味がなかった。
24日に発表された提携の骨子は、両社がすでに建設を予定しているスマートシティに、互いの技術を持ち寄る、というものだった。具体的にはトヨタが静岡県裾野市東富士エリアで建設する「Woven City(ウーブン・シティー)」と、NTTが東京・品川駅前で開発する「NTT街区」が舞台になる。
ウーブン・シティーは今年の1月、トヨタが米国の家電見本市「CES 2020」で発表した構想だ。2020年末に閉鎖予定するトヨタ自動車東日本、東富士工場(静岡県裾野市)の跡地に2000人が暮らし、働くスマートシティを作り、自動運転やIoTの実証実験をしようという試みだ。 品川駅前のほか福岡、札幌、横浜や千葉などの自治体との協業で構築する「NTT街区」はAIやIoTを使い、事件や事故の迅速な検知・分析や予測などを目指す。