住宅ローン支払額への影響が懸念される

2023年4月の植田和男新総裁の就任以降、日銀は政策の微修正を行ってきた。だが大きな枠組みとしては大規模緩和策の継続という流れに変化はなく、そうであるが故に円安が進みやすい状況が続いてきた。

もし2024年以降、ゼロ金利が解除されることになれば、本格的な政策転換のスタートであり、為替市場も大きく動く可能性が高い。今回の決定は本格的な政策転換の序章という位置付けであり、冒頭で今回の決定がターニングポイントになると言ったのはそういった意味からである。

短期金利が上がれば、これまでとは異なるインパクトが日本経済にもたらされる。住宅ローンを借りている人の多くは変動金利型だが、短期金利が上昇すると住宅ローンの基準金利である短期プライムレートも上昇する可能性があり、場合によってはローン支払額の増加が懸念される。

企業の資金繰りコストも上昇するので、借り入れの多い企業にとっては収益の低下要因となるだろう。ゼロ金利が解除された後は、長期金利がさらに上昇することが予想されるため、政府の利払い費が増大し、予算制約がより大きくなってくる。

日本経済はバブル崩壊以降、いわゆる「失われた30年」が続いており、ゼロ金利とデフレが当然視されていた。このところインフレが顕著になってきたことで、生活実感として経済が変わったことを認識する人が増えてきた。

今回の日銀の決定は、2024年以降、日本経済の仕組みが抜本的に変わる可能性を示唆するものであり、私たちはこれまでの常識を捨て去る覚悟が必要となってくるだろう。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
関連記事
新NISAが始まっても投資に手を出してはいけない…経済学者が「老後に備えるならコレ」と唯一勧める金融商品【2023上半期BEST5】
岸田文雄首相の周辺は財務官僚だらけ…「聞く力」から「増税メガネ」に変わってしまった納得の理由
ついに世界中で「不動産バブル崩壊」が始まった…「中国の不動産大手破綻」が日米欧にも波及する根本原因
日本は「昭和を終わらせる」ことに失敗した…社会心理学が教える「失われた30年」が終わらない本当の理由
「4万円減税」より「4万円給付」のほうが効果的なのに…岸田首相がこだわる「減税」はスジが悪いと言える理由