善意で延長したAirbnb外での取引となるため、Airbnbはこの件に関知せず、ホストとして受けられるはずだった補償は適用されない。男性は現在この件で係争中だ。「このような悪夢のような生活のなかで、市からも警察からも守られていないと感じることは、恐ろしいことです」と男性は述べ、同じ思いをほかのホストに味わってほしくないと語った。

ビジネスとして営むAirbnbは、ホストに利益をもたらすとは限らない。カナダの民放局であるCTVは、ブリティッシュ・コロンビア州では来年5月1日から施行される新たな規制法を前に、「数十万ドル(数千万円以上)」の損失を覚悟しているという男性ホストの例を報じている。

規制法は短期ステイを制限し、より多くの物件を長期ステイに振り向けるよう意図されている。だが、男性がレンタル収入で住宅ローンを賄えると期待して購入した物件は、400平方フィート(約37平米、日本の1LDK程度)のサイズだ。短期ステイには十分との目算だったが、カナダの長期ステイ向け物件としては明らかに需要がない。月3000ドル(約33万円)のローンを賄うことはできず、「GIC(定期預金)にお金を預けたほうがまだよかったです」と男性は肩を落とす。

写真=iStock.com/DoraDalton
※写真はイメージです

67階建てのタワマンが「ゴーストホテル」になった

問題の絶えない短期ステイは、世界の都市で禁止や規制の動きが広がっている。カナダ放送協会によるとトロントでは、住宅がホテルのように運用されている「ゴーストホテル」の事例が問題化。きちんとしたホテルのようなフロントもなく、スタッフも常駐せず、オーナーも宿泊者も多くはネット上でしかやり取りしないことから、いつしか「ゴースト」の名が付いた。

短期ステイ問題に取り組むNPO団体の「フェアーbnb・カナダ」がトロント市のデータを新たに分析したところ、10月時点で市中心部にある3棟の高層マンションだけで、計600件のリスティングが掲載されていた。

市中心部にある高層マンション「ICE Towers」(67階建て743戸、57階建て600戸の2棟。計1343戸)には236戸、「300 フロント・ストリート・ウェスト」(52階建て、684戸)には195戸、「The Parade Towers」(44階建てなど4棟からなる。計1758戸)に166戸の短期レンタル物件があった。

「ゴーストホテル」として特に問題視されているのが、ICE Towersだ。Airbnbはサイト内で詳細な住所を確認できないが、ICE Towersとみられる物件が1泊2日で3万7000円ほどでリストアップされているのが確認できる。

ちなみにICE Towersの販売価格は39万9000~119万カナダドル、賃貸は2200~6000カナダドルとなっている。