法廷闘争を経て市は今年9月5日、前掲の新たな規制法を施行。これを受けてAirbnbの掲載リスティング数は激減した。米テックメディアのワイアードは、8月から9月にかけ、短期ステイ用の全リスティング数のおよそ70%に相当する約1万5000件が掲載リストから消えたと報道。Airbnbの「アポカリプス(大惨事、黙示録)」であるとしている。多くは短期ステイから長期ステイに用途を変更して再掲載しているが、30日以上の宿泊条件は一般的な観光客にとって利用しづらい可能性がある。

新制度に基づく許可を申請しているオーナーもあるが、ニューヨーク地元メディアのゴッサミストによると、申請数は4624件に留まる。大半はまだ審査待ちであり、受付が始まった今年3月から9月までに許可が出たリスティングは405件と、申請の1割に満たない。Airbnbは訴訟を通じ新規制を止められると確信していたため、Airbnbオーナーらに対し申請を積極的に推奨してこなかった。8月8日の敗訴を受け急に申請を奨励しだしたことで、審査のペースが追いついていないのだという。

地元の住民から住処を奪っている

Airbnbなどの民泊は限られた住宅市場を圧迫し、世界の都市で家賃の高騰を引き起こしていると指摘される。アメリカだけでなくヨーロッパでも、規制論が勢いを増している。英ガーディアン紙は、ニューヨーク市のような規制が「ヨーロッパ本土やイギリスじゅうの都市を、本当にそこに住む人々の手に取り戻すことができるよう、その先例を示してくれる」ことが期待されていると報じる。

ロンドン南部の高級マンションに住む住民は、同紙に対し、「私たちの建物にはAirbnbがたくさんあります」と語った。「具体的に何件かはわかりませんが、見知らぬ人が出入りするのをよく見かけます。セキュリティー上の問題もありますし、騒音もひどいです」と心配を隠さない。

Airbnbの出発点は本来、ホストが自宅の空き部屋を旅行者に貸し出して有効活用し、同時に交流を楽しむところにあった。しかし近年では完全に営利目的の運営や企業による複数部屋の運用が目立つようになっている。ホスト不在で部屋を貸し出す「プロ化」が進んでいると記事は指摘する。

バルセロナ、マドリード、ロンドン、プラハなどの都市は、年間の短期ステイの宿泊日数に上限を設けている。例えばパリでは120日までだ。

だが、規制を遵守するホストばかりではない。ガーディアン紙は、「しかしながら、これらの都市での規制の監視が厳しくない場合、ホストは制限を破ることが一般にみられる」と指摘する。例えばロンドンでは、年間上限を90泊までに制限している。だが、ロンドン中心部に位置するカムデン・タウンの評議会は昨年行われた調査の結果、4400件の宿泊事例のうち、4分の1以上が規制を超過していたと突き止めた。

カナダ・トロント中心部にあるICE Towers
カナダ・トロント中心部にあるICE Towers(写真=Caontrt/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons