騒音のクレームを入れると、仕返しに拳銃を持った男が現れた

観光客の流入によるトラブルと治安の悪化に、住民たちは危機感を募らせる。米中西部ミズーリ州のセントルイス市では、短期ステイに反対する抗議の立て札が至る所に見られる。

反対運動が起きるのも無理はない。地元紙のリバーフロント・タイムズ紙によると、数々の事件が起きているようだ。ある住民の自宅前に、わずか2軒先のAirbnbに泊まっていた男が現れ、ピストルを振りかざした。騒音にクレームを入れた仕返しではないかと、この住民は怯える。

おなじ物件では、近隣宅へのゴミの放置、騒音、毎週末のように開かれる大規模なパーティーに、スピード違反や暴力沙汰など、あらゆる問題が起きている。オーナーは住んでおらず、深夜の騒音にクレームを入れたところで対応しようがない。問題はこの物件に限らないようだ。同紙は「セントルイスの至る所で、短期レンタル近隣の住民から、同様の問題が報告されている」と指摘する。

物件オーナーが短期ステイの収益性に心を奪われた結果、同じ物件にもとから住んでいる住人に対し、対応がおざなりになる例も出始めた。同市に済む37歳女性は、8年間住み続けたマンションをいたく気に入っていた。しかし、オーナーが短期レンタルの収益性に味を占めたことで、自宅として長期で借りている住民への対応が悪化した。今では引っ越し以外に選択の予定がなくなってしまった、とこの女性は嘆く。オーナーは一方的に家賃を値上げした挙げ句、修繕の依頼を無視し続けているという。

「5戸のマンションを(Airbnb向けに)改築し、家具を揃えるだけの時間と資金はあるというのに、(私の部屋の)屋根の雨漏り、割れて雨水の染みこむ窓、そしてうるさいだけで効きの悪い空調を直してほしいというメンテナンスの依頼は無視しているのです」

彼女はやむなく現在のマンションを出て、新しい家を購入しようと考えている。だが、Airbnbの影響で値上がりした地元の住宅市場は「恐ろしい」状態になっており、住み慣れた地区では物件を手に入れられそうにない。

ドアをノックする女性の手
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短期ステイの方が儲かるから…大家の対応がおざなりに

短期ステイの旅行者は、ときにオーナーにとってさえ頭痛の種だ。米ABC系列ロサンゼルス局が10月に報じたところによると、あるAirbnb利用者はロサンゼルスのリスティングに、宿泊料を払わずに1年以上も住み続けているのだという。

オーナー男性は2019年にゲスト女性を迎え入れたが、滞在4カ月目ごろに実施した工事でこのゲストからクレームを受け、滞在期間を無料で延長することに同意した。だが、女性は昨年4月に宿泊費を支払ったのを最後に、いまだに無料で居座り続けている。17カ月、家賃を払わずに滞在していることになる。