ミレイ氏の荒唐無稽な政治スタイルは、早晩復活するとの見方もある。アルゼンチン出身の政治学者であるロセンド・フラガ氏はAFP通信に、ミレイ氏の直近の行動が「節度と現実主義を示している」との分析を示す一方で、「政治指導者は、都合や利益、状況などに応じて理念を変えることはあっても、人格は変わることがない」と語る。

アルゼンチン国旗の中央に鎮座する太陽は、長雨が明けやっと地上を照らした太陽に由来する。常識を超えた奇策を実現しアルゼンチンの希望の太陽となるか、ミレイ氏の政治舞台での手腕が試されている

過激な主張に心惹かれる人が大勢いる

アルゼンチンの新大統領、ハビエル・ミレイ氏の奇抜な政策と人物像が引き起こす混乱は、日本にも大きな示唆を与える。アルゼンチンでは経済的困窮のなか、過激な言論で人々の興味を掻き立てるポピュリズム政治家が選挙戦に勝利した。国家が経済的地位の低下に見舞われた際、ポピュリズムがいかに迅速かつ強烈に進行するかを如実に物語る。

日本は今日のアルゼンチンほどにまで経済力が弱っているわけではないが、物価高、急速な円安、30年間変わっていないと誇張を交えて嘆かれる給与水準など、芳しくない状況が重なる。現状に風穴を開ける期待が高まれば、過激な主張をする候補者を求めようとする深層心理も作用する。ミレイ氏のような政治家が持つリスクだけでなく、彼のような政治家に魅力を感じてしまう人が大勢いることを認識したい。

日本の私たちにとって、このニュースは遠い国の出来事ではなく、身近な警鐘として捉えるべきものだ。ポピュリズムの波がいつ日本にも押し寄せるかもしれない現実を、私たちは意識しておく必要があるだろう。

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