ミレイは、死亡したコナンおよびクローンたちと特別な絆を感じているようだ。米タイム誌によると、霊媒師による霊視を信じ、2000年以上前の前世でコナンに出会ったと考えている。
コロッセオ(闘技場)で、互いに人間とライオンという姿で出会ったが、現在でパートナーになることを両者が悟っていたため、互いに殺し合うことはなかった――というのがミレイ氏の信じるストーリーだ。
中絶禁止を掲げているが…
ロイター通信によると、ミレイ氏は愛犬のクローン作りに約5万ドル(現在のレートで約710万円)を費やした。ニューヨーク・タイムズ紙が指摘するように、クローン犬は富裕層の間で流行しているが、倫理的な問題をはらむ。
クローン技術による受精では、通常よりも多くの胚が壊されるため、中絶禁止を掲げるミレイ氏の政治方針と矛盾する。だが、批判を意に介さないミレイ氏は、クローン犬を堂々と引き連れ、公の場に姿を現している。
ニューヨーク・タイムズ紙はミレイ氏が、自身のクローン犬を作成したアルゼンチン人科学者を、国家科学評議会の議長に任命する意向であると報じている。既存の常識にとらわれないミレイ氏の性分を物語るエピソードだが、世間との倫理観のずれを示唆している。
口癖は「金がない」
「金がない」とミレイは繰り返し訴える。
肥大化した政府支出を削減し、自身が提案する財政改革の必要性を強調してきた。アルゼンチンはこれまで繰り返しデフォルト(債務不履行)を起こしてきた。近年は回復基調にあったが、左派の前政権が財政拡大を進めた結果、政府債務は急増。慢性的な財政赤字と貿易赤字を抱え、今も国際通貨基金(IMF)対して440億米ドルの債務を負っている。
加えて、BBCによると、同国の年間インフレ率は143%に達し、アルゼンチン国民の40%が貧困にあえぐ現状が続いていた。
疲弊したアルゼンチン国民は、ミレイ氏に経済を立て直す“ショック療法”の実施を期待している。就任翌日の12日、カプト経済相がその第一弾を発表した。通貨ペソの公定為替レートの54%切り下げ、新レートは1ドル=800ペソにする。また、省庁の数の半減や地方への移転削減、公共事業の停止などの歳出削減策を発表した。ミレイ氏の計画では、中央銀行の資金発行能力を大幅に制限し、関税補助金を撤廃すると予想されている。
野心的な改革案を示すが、AP通信は、アルゼンチンの最大政党・ペロン党議員や労働組合から、強い反発が予想されると指摘する。
もともとミレイ氏は、急進的なリバタリアン(自由至上主義)経済学者であり、テレビ評論家でもあった。異端的なアプローチを掲げる現在は人気絶頂だが、苦境にあるアルゼンチン経済の改革を実現できなければ、早晩批判される側の立場に甘んじることになろう。