話すこと自体が悪であるかのような意識

③話すことを禁じるコロナ禍

話をしにくい文化があることに加え、世代を超えて話す貴重な機会であった地域のお祭りや銭湯といった文化が減り、スマホの普及で人はますます話さなくなりました。このようななかで、2020年には話すことを妨げるダメ押しのような事態が起こりました。新型コロナウイルスの感染対策のために、あらゆる場所で「黙る」ことが強いられるようになったのです。この状況は学校現場も例外ではありません。

竹内明日香『すべての子どもに「話す力」を』(英治出版)

主体的・対話的で深い学び(通称アクティブ・ラーニング)が導入され、ペアワーク、グループワークが盛んになる予定だった学校でしたが、隣の席の子との会話や複数人数での対話は禁止、給食は「黙食」、休み時間も触れ合いなし。声を発する場面があっても、マスクによって表情がわからず、声もかき消されてしまい、コミュニケーションを図ることが非常に難しくなっています。

子どもたちは、話すこと自体がどこか悪であるかのような意識を持って学校生活を送っているように見えます。このニューノーマルがどこまで続くのか、これが学校内での話す力の育成にどの程度の影響を及ぼすのか、予断を許さない状況にあると感じます。

以上が、私が感じる「社会・文化」レベルのチャレンジです。この層にある課題は特に、教育以外のお仕事をされている方々にも意識して改善していける部分があるのではないでしょうか。


※1 日本を研究したエドワード・T・ホールは、このような特徴を「ハイ・コンテクスト」と称して、欧米のようにお互いが違いを前提に話し合って理解し合う「ロー・コンテクスト」型コミュニケーションと区別しました。
※2 井出祥子・藤井洋子編集・執筆『解放的語用論への挑戦 文化・インターアクション・言語』くろしお出版、2014年
※3 World Economic Forum, Global Gender Gap Report 2021, 30 March 2021
※4 日本経済新聞「三菱電機『志のある現場主義』に進化を 専門家に聞く 三菱電機調査報告書 私はこう見る(上)」2021年10月17日
※5 エイミー・C・エドモンドソン『恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』野津智子訳、英治出版、2021年
※6 日本経済新聞「ノーベル賞・真鍋氏『日本に戻りたくない』の教訓」2021年10月8日

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