※本稿は、上阪徹『安いニッポンからワーホリ! 最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
頭で訳していると、いつまでたっても話せない
現地で使える英語の勉強法はあるか。たくさんの英語がうまく話せない日本人と接してきた、シドニーの語学学校「MIT」のスタッフ、KITさんがこんな話を聞かせてくれた。
「日本人がしゃべれないのは、文法や読み書きの勉強ばかりやってきたからです。頭がすぐに訳そうとしてしまう。それでも最初は聞き取れなかった英語も、毎日、学校にやってきて、英語の授業を受けているうちに、ずいぶん聞けるようになります。逆に言えば、リスニングだけ先に伸びてしまうんです」
暮らしているのは、英語が母国語のオーストラリア。日本人の友達がいたとしても、生活をしていれば、英語は日常的に入ってくる。そうすることで、言っていることはわかるようになっていく。
「でも、話せないんです。それは、頭で訳を考えてしまうからなんです」
そして日本人は、言っていることがわかったら、とりあえず何か返さねば、と態度で示してしまう。典型的なのが、ニコニコと笑ってしまうこと。
「加えて、ついつい“Yes ,Yes”と答えてしまう。あるいは、“Where are you from?”と聞かれたら、“Japan”と言ってしまう。“What time did you wake up this morning?”と聞かれたら、“Seven”で済ませてしまう。これでもコミュニケーションはできるんですよ」
語学の練習は歌を覚えるのと同じ
しかし、英語を話せていることにはならない。また、当然のことだが、深いコミュニケーションはできない。日本に戻ったとしても、電話の一本も取れないという。
「だから、語学学校で最初によく言うんです。英語力を伸ばしたかったら、間違えてもいいし、単語を逆に並べてしまってもいいので、簡単なことでも文章で答えなさい、と」
Where are you from?”と聞かれたら、“I'm from Japan”と答える。
「そうやっていくうちに、リズムとして声が出てくるようになるんです。歌と同じです。歌は初めて聞いたときには、メロディを覚えられませんよね。でも、何度も聞いているうちに、自然に出てくるようになる。この感覚です。英語が早くしゃべれるようになる人と、そうでない人との違いは、そこだと思うんです」
普段、生活をしている中でも、アンテナを張るといいという。スーパーで買い物をしていると、レジ係と前のお客がどんな会話をしているか。それをしっかり聞く。
「そうしているうちに、同じようなことを話していることに気づくんです」
アメリカの大学に行ったKITさんも、当初は“Yes ,No”くらいしか言えなかったという。しかし、間違ってもいいから自分から文章として声に出すようになってから、話せるようになっていった。