福岡ソフトバンクホークスのコーチだった倉野信次(49)さんは、47歳の時、職を辞して単身メジャーリーグに留学した。当初は英語が思ったように通じず大変苦労したが、あることをきっかけにチームに溶け込めるようになったという。いったい何があったのか。倉野さんによる『踏み出す一歩』(ブックダム)より紹介する――。
倉野信次さん
画像提供=ブックダム
倉野信次さん

仕事ではまったく使えなかった翻訳機

通訳のいないアメリカ武者修行。渡米前に、少しでも助けてもらえるように、というよりめちゃくちゃ頼りにして、ネットで最も評価の高かった最新の翻訳機を購入しました。英語が話せない僕には、スマートフォンとともに2大必須アイテムです。しかし、こちらに来てすぐにその頼みの綱とも言える翻訳機が頼りにならないことがわかりました……。

日常会話では大活躍しますが、野球の現場では専門用語やネイティブな表現が多く、その英語を直訳するだけではほとんど意味がわからないことが多いです。そして翻訳機は本体をかなり近づけないと、声をうまく拾ってくれません。

プライベートや2人だけでの会話であれば、相手の口元に近づけることが可能な場面もあります。しかし練習中のミーティングやコーチ同士、コーチと選手で話しているときに内容を知りたくても、話している人の口元に唐突に翻訳機を近づけるなんてできるわけがありません。現場ではほとんど使えなかったのです……。

それでも、少しでも意味がわかればと、使えそうな雰囲気の場面ではできるだけ頑張って使っていました。2人での会話のときにいちいちポケットから取り出して、お互いの口元に持っていく。しかし、大事な話のときには不自然ではありませんが、練習中の何気ないやり取りのときにはサラッと話したいので、なかなか使えません。そうすると、言葉の通じない僕に対して、やはり相手からは気軽に話しかけてこなくなります。まあ、それくらい英語ができなかった自分が悪いのですが……。