毒親から自由になるためのステップ

一人暮らしを始めて3カ月ほど経つと、奈良さんは親への怒りに震え始め、その一方で、「自分には優しい親は2度と存在しない」という事実に悲しみ、「どうしてあんな仕打ちをされなきければならなかったんだろう」「あの時私が耐えていたら違ったのかな……」と、一人になると泣いていた。

奈良さんは、物理的に親と離れても親に囚われ、苦しみ続ける自分に気付く。そんな中、これまでの自分の経験や本、インターネットなどで調べたことと併せて、毒親から自由になるための方法を考えた。それが以下だ。

ステップ1:まずは自分の毒親のタイプを知る
ステップ2:悪いのは自分ではないことに気づく
ステップ3:自分のなかの怒りや悲しみを認める
ステップ4:親が毒親となってしまった理由を考える
ステップ5:親にできること・できないことの線引きをする
ステップ6:今後の親との付き合いかたを考える
ステップ7:自分の人生から親を切り離す

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まず、自分の毒親のタイプを把握し、悪いのは自分ではないということに気付く。

「子どもにとって親は絶対的な存在なので、『おかしい』と思うことは勇気のいることです。また、毒親を持つ子どもは、毒親のおかしさに毎日触れていると、『親がこんなことをするのは自分が悪いからだ』と思ってしまうケースがほとんどです。子どもは親のことを好きになろうとするものなので、親のことが憎くて憎くて殺してやろうと思っていた私も、最初は親のことが嫌いになれなくて、できれば普通の母娘になりたかった。結局だめでしたけど……」

この段階では、「親は正しい」という思い込みや、「親は敬うべきだ」という刷り込みを取り払い、「自分は悪くなかった」と思えるようになることが大切だ。

自分が親からされてきたことに向き合い、自分は悪くなかったと思えるようになると、「親への怒り」や「自分がされたことへの悲しみ」に向き合わなくてはならなくなる。それはいわば、「毒親育ちの自分」に向き合う作業だ。奈良さんはその作業を、「絶縁前よりつらかった気がします」と話す。

「親から言われ続けてきた『お前が悪い』という言葉が嘘だったと認識できると、ものすごい悲しみが襲います。それがとてつもなくつらかったです。しかし毒親への怒りや悲しみは、解毒につながる重要な一歩だと思います」

一方で、親の良い面や苦労してきた面を見せられてきた毒親育ちにとっては、「親に対してこんな気持ちを抱いてもいいんだろうか……」と混乱する場合もあるだろう。その場合は、毒親の良い面と悪い面を切り分けて考え、感情を整理することが大切だ。

「毒親育ちの自分」に向き合い、感情の整理が終わったら、次は親が毒親になってしまった理由を考えてみる。奈良さんは、「この作業は、親の事情を受け入れるためにするのではなく、客観的に毒親と子どもの現状を理解するために必要であり、『自分は悪くなかった』をより深めるためのステップだと思ってほしい」と言う。

例えば、実は親の両親も毒親だったとか、親が発達障害だったとか、一方の親にハラスメントを受けていたなど、親が毒親になってしまった理由が分かれば、自分のせいではなかったことが明確になる。

親のバックグラウンドを理解できたら、今後、自分が親に対してできること・できないことの線引きをし、自分の人生から親を切り離す仕上げに入る。

「私の母のように、子どもを一人の人間として尊重することは無理でも、自分の世間体を保つためならお金は出すという親もいます。大事なのは、自分の親の傾向を理解し、対策することです。『自分の親はこのタイプだからこんな行動をとってしまうんだな』と理解することで、精神的に適切な距離を置き、親の人生から自分を切り離すことができるようになるのです」

毒親の多くは子どもとの共依存関係を構築している。共存関係にある両者は、相手との間に境界線がないため、子どもを所有物のように扱う。だから子ども側から線引きし、共依存関係を断ち切ってしまうのだ。

奈良さんは、つらい境遇にありながらも自分を客観視し、この「毒親から自由になるための7つのステップ」を考え出した。