自営型でこそ日本企業の能力は発揮される
注目すべき点が二つある。
一つは、それが新たな経営環境にマッチしているだけでなく、人間にとって理想に近い働き方だということである。たとえば近年明らかになったように、日本人の仕事に対するエンゲージメント(熱意、献身、没頭)は世界最低水準にとどまるが、フリーランスだけを見ると欧米に遜色ないほど高い。
もう一つは、伝統的な日本の職場に特有な仕事能力が、自営型でこそ存分に発揮されるということである。しかもわが国では中小企業の比率が高く、また高度経済成長期までは雇用労働者より自営業者のほうが多かったことから想像できるように、自営型は日本社会になじみやすい。したがって日本の伝統的な「強み」を最大限に生かせる働き方だといってよい。
一人でまとまった仕事をこなす自営型は、企業にとって生産性向上と人材不足対策の切り札になるかもしれないし、エンゲージメントの高さはリテンション(人材確保)につながる。また勘や熟練を生かしマイペースで働けるところは、シニア層の活用にも適している。
世界のビジネス界、労働界の議論がまだジョブ型の先へは進まないいまこそ、日本企業、日本社会が先陣を切って自営型の働き方を発展・普及させれば、“ジャパンアズナンバーワン”の再来もけっして夢物語ではなかろう。世界に通用するのはスポーツ界の新生日本代表チームだけではないはずだ。