沖縄県の農地が急減している。この5年で経営耕地面積は2万4790ヘクタールから1万9475ヘクタールへと21.4%も減っている。とりわけ大量離農が起きているのがサトウキビだ。いったい何が起きているのか。ジャーナリストの山口亮子さんが取材した――。
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入力ミスを疑うほど農地が急減

日本は砂糖の原料となる「原料糖」を年間約100万トン輸入し、約70万~80万トンを国産で賄う。カロリーを基に計算するカロリーベース自給率でみると、2022年度に砂糖類は34%だった。沖縄で生産する原料糖は約8万トンで、全体の約4%、国産の約1割を占める。サトウキビを生産する沖縄と、鹿児島の南西諸島の農家は、概して零細で高齢だ。

そんな沖縄の農業に異変が起きている。農地も農家も減り、規模拡大すら進まない――。これまで農地と農家の減り方は、他県に比べて緩やかだった。ところが、5年に1度行われる農業版の国勢調査「農林業センサス」の2020年版で、いずれも半世紀ぶりの急減となっている。沖縄の基幹作物であるサトウキビは、国からの補助なしには成り立たない。政治で農家の収入が決まるという保護の手厚さが、かえって農業の停滞を招いている。

「なぜ沖縄の農地がこんなに減っているのか……。統計の入力ミスかなとも思うんですけど」

沖縄の農業を取材するきっかけは、農学の著名な研究者が農林業センサスの結果を前にこう言って考え込んだからだった。沖縄の調査結果に首をかしげる研究者は他にもいて、他県の動きや国内農業の常識とは異なる挙動をしていることに興味を惹かれた。

2020年の沖縄県の農家数と耕地面積は、15年に比べてともに2割以上減った。農家が高齢化して減っていくのは分かり切ったこと。けれども、農地が5年の間に21.4%も減ってしまうというのは、農学の常識では考えにくいことだった。

なぜなら、高齢の農家が離農しても、その農地は周囲の農家によって吸収されることが多いからだ。農地の減り方は、農家のそれに比べると緩やかになる。15年と20年を比べた農地の減少率は、全国平均で6.3%。地域別にみると、沖縄の次に高い四国は13.4%だった。

沖縄は、群を抜いて高い。統計結果を疑いたくなるのは、当然だった。

だが、取材を進めるうち、入力ミスではなく現実を反映していたと分かる。農地を大きく減らした原因の一端は、沖縄の象徴と言えるサトウキビにあった。