ユニクロは全国21店舗で花束を売っている。季節の生花は1束390円、3束990円だ。なぜそうした売り方になったのか。マーケティングコンサルタントの北沢みささんが解説する――。(第1回)

※本稿は、北沢みさ『社会に良いことをする ユニクロ柳井正に学ぶサステナビリティ』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

花を売るユニクロの店舗写真
写真=プレジデント社提供
ユニクロの店頭に構えられたフラワーコーナー

柳井正と佐藤可士和が17年間続ける「禅問答」

クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏とユニクロとの関係は、2006年ユニクロがニューヨークのSOHOにグローバル旗艦店をオープンさせる際に、佐藤氏にグローバルブランド戦略のクリエイティブディレクションを依頼したことから始まる。

当時、携帯電話のデザインで注目されていた佐藤氏をテレビ番組で見たファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(以下、柳井社長)が、「この人に会いたい! この人を呼んでください!」と言ったというのは有名なエピソードである。

以来17年間、佐藤氏と柳井社長は毎週のように対面し「新しい服とは」「店とは」「デザインとは」といった、まるで禅問答のような会話を続けている。

佐藤氏は店をブランド発信のメディアと捉え直し、2006年以来、ユニクロの海外のグローバル旗艦店を「全世界に向けたショーケース」としてデザイン。それをニューヨーク、ロンドン、パリ、上海などへと展開してきた。

「一番はじめの『ニューヨーク SOHO店』はもちろんグローバルにおけるブランド戦略なので、社会の中でブランドの存在を際立たせることが目的でした。でもこの17年でユニクロ自体もすごく大きく成長したし、もっと利他的なことが社会から求められるようになってきた。

もちろん環境のこともありますが、その店が地域にとってどういう意味合いを持つかということを意識するようになったんです。店が服を買うためだけの場ではなくて、もっと複合的な役割を持っていかないとブランドとして社会に広く受け入れられないんじゃないか、と考えるようになっていきました」(佐藤氏)

店は「服を買うためだけの場」ではダメ

社会から受け入れられ支持され続けるために、どんなブランドになって、どんな店を作っていくべきなのか。その答えを模索しながらも、確実な手応えがあったのは、2020年春に日本で3店舗の新店をオープンしたことだという。

まず4月の「UNIQLO PARK横浜ベイサイド店」(神奈川県横浜市:売り場面積660坪)では、ファミリー層の多い商圏に合わせて店舗の周りや屋上を誰でも入れる公園にした。店舗の外側全体にすべり台、ボルダリングやクライミングなどを配し、子供たちが自由に遊べるようになっている。

屋上のジャングルジムからは東京湾を一望できる。それまでユニクロの店舗はあくまで買い物をする場所であって、いかに商品を見やすく、選びやすく、買いやすくするかということに注力されてきた。

しかし、UNIQLOPARK横浜ベイサイド店は初めて、「人が集う場所を作る」ということにチャレンジした。そして、この店舗で初めて、ユニクロは花を販売し始める。

「店は買い物する場所」から「店は買い物しなくても、人が集まれる場所」であるというこのフォーマットに手応えを感じながら、ユニクロは2020年6月に「ユニクロ原宿店」(東京都渋谷区:同600坪)、そして銀座の「UNIQLO TOKYO」(東京都中央区:同1500坪)をオープンさせる。

原宿店ではポップカルチャーの発信基地として若者が集まるよう、多くのブランド・アーティストとの協業コーナーを作った。UNIQLO TOKYOではコーヒースタンドを作り、地元・銀座にある老舗喫茶店のスイーツも提供している。

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