ロシアのウクライナ侵攻で日本の防衛力強化が叫ばれる中、沖縄の辺野古新基地を巡って国の“非人道的な計画”が問題化している。ノンフィクションライターの古木杜恵さんは「第二次大戦後77年を経た今も糸満市などから沖縄戦戦没者の遺骨が見つかる。国は遺骨収集を推進する責務があるにもかかわらず、戦没者の遺骨が眠る土砂を採取し、新基地の軟弱地盤改良工事に投入しようとしている」という――。
着陸時の飛行機のシルエット
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在日米軍が集中する沖縄で国が計画する非人道的行為

沖縄は6月23日、「慰霊の日」を迎えた。

住民を巻き込んだ熾烈な地上戦で、20万余りの尊い生命、財産、文化遺産が奪われた沖縄戦から77年。激戦地となった本島南部・糸満市摩文仁の県営平和祈念公園では「沖縄戦全戦没者追悼式」が開かれた。多くの遺族が同園内にある「平和の礎」に集まり、戦没者に思いをはせ、世界の恒久平和を願う。

「平和の礎」は国籍や軍人、民間人を問わず、沖縄戦などで犠牲となったすべての人々の氏名を刻銘碑に刻む記念碑である。太平洋戦争・沖縄戦終結50周年を記念して1995年6月23日に建設された。なお沖縄県出身者は、1931年に始まる15年戦争の間に県内外で戦争が原因で亡くなった人々の氏名も刻まれる。

刻銘者数は今年新たに55人の名前が刻まれ、計24万1686人に上る。出身地は沖縄県が14万9611人、県外都道府県が7万7485人、米国1万4010人、英国82人、台湾34人、北朝鮮82人、大韓民国382人。本土の全46都道府県別では北海道の1万805人が最多で、最も少ない秋田県は485人が刻銘されている。

沖縄では戦後77年を経た今も、激戦地だった糸満市などから沖縄戦戦没者の遺骨が見つかる。遺骨収集をめぐっては、2016年の国会で「戦没者遺骨収集推進法」が超党派の議員立法により全会一致で成立した。

同法の第1条は「いまだに多くの戦没者の遺骨の収集が行われていないことに鑑み、戦没者の遺骨収集の推進に関し国の責務を明らかにする」と明記。さらに2016年から2024年までを「集中実施期間」としている。

ところが政府は遺骨収集の責務を果たすどころか、激戦地となった南部から戦没者の遺骨が眠る土砂の採取を計画している。