「総裁選と総選挙は表裏一体だ」

自民党政権では、権力闘争の舞台である総裁選に絡んだ衆院解散が繰り返されてきた。解散風をちらつかせることで、国会審議を推進したり、政権運営の行き詰まりを打開したりすることも行われている。

岸田首相が来年9月の総裁再選を目指すなら、その前に衆院を解散し、勝っておきたいところだが、10月22日投票の衆院長崎4区補選で自民党候補が辛勝、参院徳島・高知選挙区補選で大敗したという選挙結果、内閣支持率が日本経済新聞の10月27~29日の世論調査で33%に下落するなど各種調査で政権発足以来最低を記録する現況では、その機運も出てこない。首相が20日に打ち出した所得税減税に対する支持が広がらないのも一因だろう。

自民党の選挙実務を仕切ってきた久米晃・前事務局長は、23日のTBSテレビで、岸田首相の解散戦略に関連し、「(政策の)結果が出なければ、解散は打てない。打てなければ、総裁選の再選も難しくなってくる。総裁選と総選挙は表裏一体だと思う」と解説している。

2021年8月末、菅義偉首相はコロナ禍の下で内閣支持率が続落する中、再選を期していた9月の総裁選(17日公示)を先送りし、衆院解散に踏み切ろうとした。だが、党内の反発を受けて断念し、9月3日には総裁選不出馬を表明するまでに追い込まれたことは、記憶に新しい。

岸田首相は11月9日、読売新聞が「年内解散見送りへ」と報じたのを受け、首相官邸で記者団から確認を求められたのに対し、「経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組む。それ以外のことは考えていない」と述べ、年内の衆院解散見送りを表明した。今後のタイミングとしては、来年の通常国会終盤が有力視されるが、岸田首相も、9月の総裁選前に解散できるだけの力と技術が身に付かないようなら、再選出馬も危ういのではないか。

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