岸田首相は9月13日、内閣改造・自民党役員人事を行った。岸田政権はこれからどうなるのか。政治ジャーナリストの鮫島浩さんは「麻生氏や茂木氏、主要閣僚は早々に留任が決まった。真新しさはなく、支持率アップは絶望的だ。それでも岸田首相が政権継続へ自信を深めているのは、バイデン政権の存在がある」という――。
初閣議を終え、記念撮影前に笑顔を見せる岸田文雄首相(中央)ら=2023年9月13日午後、首相官邸
写真=時事通信フォト
初閣議を終え、記念撮影前に笑顔を見せる岸田文雄首相(中央)ら=2023年9月13日午後、首相官邸

人事は「次の首相」を弱らせる最後のチャンスだった

岸田文雄首相はかつて「首相になってやりたいこと」を問われて「人事」と口を滑らせたことがある。9月13日の内閣改造・自民党役員人事は、1年後の自民党総裁選に向けて、ポスト岸田を狙うライバルたちを「人事異動」で弱体化させる最後のチャンスであった。人事構想を練りに練ったに違いない。

2年前の総裁選を争った河野太郎デジタル担当相(麻生派)は、マイナカード問題で世論の批判を浴び、マスコミの世論調査で「次の首相」のトップから滑り落ちた。高齢層に不評のデジタル政策を引き続き押し付け、国民人気をさらに失墜させることを狙って留任させるのは既定路線だった。

同じく総裁選を争った高市早苗経済安保担当相(無派閥)は、唯一の後ろ盾であった安倍晋三元首相が他界して自民党内で急速に存在感を失った。とはいえ、右寄りの安倍支持層からは根強い人気を得ており、ここで閣外に追いやれば安倍支持層が反発するのは目に見えていた。

福島第一原発の処理水の海洋放出に抗議して日本の水産物の全面禁輸を断行した中国に対し、国内世論は反発を強めている。反中感情の高まりが、岸田政権の失政から目を逸らす効果を生んでいる今、高市大臣を交代させて右派の反発をわざわざ買う必要はない。

しかも自民党は女性議員の割合が低く、閣僚候補の人材難だ。女性登用を掲げる岸田首相にとって、高市大臣の留任もまた既定路線だった。

最大の狙いは「茂木氏を幹事長から外すこと」だったが…

残るライバルは茂木敏充幹事長(茂木派)だった。岸田政権の「生みの親」である麻生太郎副総裁(麻生派)の強い推しで幹事長に起用したものの、昨年秋の閣僚辞任ドミノで内閣支持率が急落した後、茂木氏はポスト岸田への意欲を隠さなくなり、岸田首相との関係は冷え込んだ。