木原氏は代わりの利かない「米国との窓口」

岸田首相がそこまでして木原氏を守るのは、バイデン大統領と岸田首相をつなぐ窓口役を果たしてきたからだ。日米外交筋は「岸田政権の内情は木原氏からエマニュエル駐日大使らを通してバイデン政権に逐一報告されている」と明かす。

木原誠二衆議院議員(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)
木原誠二衆議院議員(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

木原氏が岸田首相のキーウ訪問に同行したのも、疑惑渦中に身を置きながら8月にキャンプデービッドで行われた日米韓首脳会談に同行したことは、木原氏がバイデン政権との窓口役として欠かせない存在であることを物語っている。

同筋は「岸田首相は官房副長官を退任する木原氏と二人で夜を徹して内閣改造名簿を作成した。こうした経緯はすべてバイデン政権に伝わっている」と打ち明ける。

国内世論や党内基盤よりも米国の支持を得ることで政権延命を図る岸田首相にとって、木原氏は代わりの利かない「米国との窓口」だ。国内世論や自民党内からの反発を承知のうえで、幹事長代理と政調会長特別補佐を兼務させる異例の人事で政権内での地位や影響力を保証する必要があった。

もうひとつは、岸田派ナンバー2の林芳正外相を上川陽子外相(岸田派)に交代させた人事である。マスコミは「女性登用」の目玉として報じているが、そんなに単純な話ではない。

林氏は日中友好議連会長を務めた親中派として知られる。戦後日本のハト派の中核を占めてきた宏池会(岸田派)のホープとして岸田首相以上に期待され、宏池会の伝統的な外交政策を受け継ぐ存在だった。バイデン政権に追従して中国包囲網に加わる岸田首相とは温度差があり、何よりも米国のバイデン政権が林外相を警戒していた。

「外交独占」を狙う意図

後任の上川外相は米国上院議員の政策立案スタッフも歴任した親米派である。自民党内の政治基盤はほとんどなく、岸田首相の意向に反して独自外交を展開する恐れは皆無だ。

岸田首相は安倍政権で外相を務めたが、安倍首相の首脳外交の陰に隠れて存在感は薄かった。首相に就任した後、外務省には菅前首相に加え、外相経験のある茂木幹事長に親近感を持つ官僚が少なくないことに気づく。

今年初めに岸田首相の欧米外遊に同行した長男翔太郎氏がパリやロンドンで公用車に乗って観光地や高級デパートを巡っていたことが週刊誌に漏れ、岸田首相の外務省不信に拍車をかけた。

今夏、外務事務次官に有力視されていた山田重夫外務審議官を駐米大使に転出させ、首相官邸にいた岡野正敬官房副長官補を事務次官に起用した「番狂わせ人事」も、岸田首相が外務省内から菅氏や茂木氏の影響力を一掃して自らが完全掌握することを狙ったとみられている。