日本社会は「枕営業」を許容してきた

当事者たちが「世界史上まれにみる性加害犯罪」とまで言われる犯罪はなぜここまで拡大し、そして見過ごされてきたのか。真の問題点を特定する必要がある。

今回の事件の事実を丁寧に拾い集めると、4つの問題点と対策の方向性が浮かび上がる。

筆者作成
問題点① 喜多川氏(加害者本人)という絶対的権限を持った犯罪者の存在

絶対的権力者である喜多川氏の性癖が少年性愛であったことから、この問題は端を発している。だが、喜多川氏はすでに故人であるため、現時点で打てる対策はない。

問題点② 少年への性加害に対する認識不足

被害者の多くがアイドルとして世に出ることを夢見る少年であった。権力を持たない人間が権力を持つ人間に「やめてください」と発言したりすることは簡単ではない。一部で被害者をバッシングする意見もあるようだが、被害者に落ち度はないと考える。

「枕営業」などという言葉が存在するように、ある意味、権力者による性加害を社会が許容してきてしまった面があるのではないだろうか。日本における性加害への厳罰化は最近の動きであり、男性に対する性加害(強姦罪)について罰則が作られたのは2017年のことである。

ジャニーズ事務所としてできることは、加害者として被害者に補償を行うと同時に、特に権力者における性加害撲滅を掲げ、喜多川家・藤島家の私財ならびに売り上げの一部を運営資金に回し、社会貢献を行っていくべきであり、ジャニーズ事務所(新会社を含む)のブランディングにも影響すると考える。

被害を無視してきたジャニーズ事務所の闇

問題点③ 訴えを握りつぶす組織風土

喜多川氏という絶対的独裁者の下、逆らえば事務所での地位は危うくなったのであろう。そのことは容易に想像がつく。では、絶対的独裁者だけが問題だったのだろうか? 私はそうは考えない。

性被害を受けたタレントの中には、勇気を振り絞って会社に相談した人がいたことがわかっている。「合宿所」と呼ばれた寮での犯行も多くあったようで、目撃者がいないほうがおかしい。むしろ、独身寮に住む同僚たち、寮を管理していた社員、タレントを育成していたマネージャーやスタッフ、さらには喜多川氏の親族など、喜多川氏の性加害を知っていたと考えるのが自然だ。

ではなぜ、これだけの性加害を誰も止めることができなかったのか。ここに真の問題点が眠っている。勇気をもって声を上げた少年の言葉を握りつぶしてしまう組織はどうして生まれたのか? そこには根深い組織の闇がある。この闇に光を当て、組織全体の風土を変えていかなければ、組織が生まれ変わることはない。