介護担い手減少──兄弟姉妹が少ない、未婚化、共働き化
ここで、ビジネスケアラーの中心となる現代の40〜50代は、過去の40〜50代とは異なり、未婚率も高く、兄弟姉妹が少ないという点も無視できません。ですから、介護が始まったとき、昔よりも介護の負担を親族で分散しにくいという特徴があります。さらに専業主婦が減っていることも、この問題に拍車をかけています。
また、20〜30代の若手にもビジネスケアラーが発生している背景は、晩婚化によって親子の年齢が昔よりも離れていることと、孫として祖父母の介護に直接・間接に関わるようになっていることがあります(10代以下でも介護に関わるヤングケアラー問題も同じ)。
兄弟姉妹が少ない時代には、子どもだけで親の介護をこなすことが難しく、孫もまた、介護のリソースとして駆り出されることになるのです。これからは、仕事をしながらの介護を、とにかく昔よりもずっと少ない人数で担当する時代なのです。
そうした人が増えている今、介護離職をしたり、介護離職までには至らなくても、多くのビジネスケアラーがパフォーマンスを低下させてしまう未来は、避けられそうもありません。
企業も危機感を持ちはじめた
東京商工リサーチが民間企業7391社に対して実施した調査では、これから介護離職が増えると回答した企業は5272社(71.3%)にもなりました。企業はそれだけ危機感を持っており、介護離職を防止するための施策を考えて実装しはじめています。ただ、日本の経済状況は決して良くないため、こうした対策に対して予算を振り向けられる企業は限られています。
また、企業としても、仕事と介護の両立問題に直面するのはこれが(ほとんど)はじめてのことです。知識も足りませんし、法改正も多く、ついていくのがやっとという状況なのです。さらに事例も(まだ)少ないことから、どうしてもすべての対応が手探りになります。
結果として、企業が従業員のために準備してくれる仕事と介護の両立支援制度は、まだまだ未完成な状態です。残念ですが、法律で定められている介護休業制度をなんとか整えて簡単な介護研修の提供にとどまっている企業がほとんどというのが現状です。
ただし、経産省は本気でビジネスケアラー支援の強化を進めようとしており、今後は、この状況は改善する可能性も高まってきています。
本書を手にとられた人の中には、「そろそろ親の介護が必要になるかも」と思っているビジネスケアラー予備軍の人もいるでしょう。希望もあります。
とにかくまずは、あなたが勤務している企業もまた、介護離職や介護によるパフォーマンスの低下を恐れているということは知っておくべきでしょう。そして、今まさに企業は、介護離職や介護によるパフォーマンス低下防止のための、より優れた施策を検討し、設計し、実装しているところでもあります。
今はまだ、あなたが勤務する企業では、そうした制度が充実していないかもしれません。しかし場合によっては、現在ビジネスケアラーとして仕事と介護の両立をしている人をテストケースとし、その人に合わせた支援制度を構築してくれる可能性もあります(実際に私は、複数の企業において、両立支援制度のパイロットテストにコンサルタントとして参加しています)。