大統領選出馬を前に綱紀粛正は進むが…
こうして、「ボディーガード人脈」の影響力が増すクレムリンは、ウクライナ戦争でも強硬姿勢を強めている。
クリミア大橋の爆破を受けて、ロシアはウクライナ南部オデーサに連日激しい空爆を行い、国連も加わる穀物輸出協定から離脱。黒海を航行する外国船舶を必要に応じて臨検すると警告した。危機を高めて相手方の譲歩を迫る北朝鮮型「瀬戸際戦術」と映る。
内政面で、政権が左右両派の弾圧など体制引き締めを強化するのは、9月10日に統一地方選、来年3月17日に大統領選を控え、ロシアが政治の季節に入るからだ。
独立系メディア「メドゥーザ」(7月18日)は、クレムリンは大統領選に向け、国営企業や支持者を動員し、80%以上の圧倒的得票率でプーチン氏の5選を達成しようとしていると報じた。出馬宣言の時期や場所は決まっていないが、11月にモスクワで行われる愛国イベントや、秋に地方を視察する際に表明する可能性があるという。
米シンクタンク「戦争研究所」は、クレムリンが大統領選を有利に進めるため、ソーシャル・メディアへの統制強化を狙っていると伝えた。ギルキン氏やプリゴジン氏ら愛国派がSNSで人気を高め、政権批判を強めたことへの危機感があるようだ。
閉鎖的な「ボディーガード人脈」は反体制分子の摘発や綱紀粛正を進めそうだが、「プリゴジンの乱」は、国家の浸食と支持基盤の脆弱さを露呈した。戦争長期化で厭戦気分が広がる中、硬直化する政権運営が第2、第3の反乱を招かない保証はない。