13週間後には「黒点ゼロ」で過ごせるかもしれない
また、このやり方なら13週間で最後の徳目まで終えられる。つまり年に4回は同じことを繰り返せるのだ。庭の草むしりをする人は、一度にすべての草をむしろうとはしない。自分の手に負える範囲を把握したうえで、1カ所ずつ順番に作業を進めていく。
私も同じように、1行ずつ順番に黒点をなくしていこうと決めた。黒点が減っていくさまを見れば、徳が身についていくのを実感し、自信がつくだろう。そして最後には、どこにも黒点をつけることなく13週間を過ごせるかもしれない。そのときを迎えるのが楽しみだった。
第3の徳目「規律」には、「仕事は時間を決めてする」という戒律がある。私は、平日の24時間の使い方を定め、手帳の1ページ図表2のような表を書き込んだ。
私はこの「自己分析計画」を実行に移し、ときどき中断しながらも、しばらくのあいだ続けた。いざ始めてみると、自分が思っていた以上に多くの過失を犯していることを知って驚いたが、時間とともに黒点は減っていった。自分に徳が身についていくさまを眺めるのは、なかなか気分がよかった。
とはいえ、しばらく経つと、私はこれを1年に1周しかしなくなった。やがて数年に1周するだけになり、海外でさまざまな仕事をするようになってからは完全にやめてしまった。だがそれでも、この手帳だけは肌身離さず持ち歩いた。
「規律」の徳目に挫折しかけた
最も大変だったのは、「規律」の徳目を守ることだった。自分の時間を自由に割り振りできる人、たとえば一人前の印刷工のような人だったらうまくこなせるのだろうが、経営者である私は、周囲の人との付き合いもあるし、いつ何時やってくるかわからない客の対応もしなければならない。つまり、時間を厳密に守るのは不可能に近かった。
また、紙やらなんやらをすべて決まった場所に置くという習慣もなかなか身につかなかった。子どものころからずっと、物を置く場所にこだわらなかったせいだ(人並み外れて記憶力がよかったので、何をどこに置いたかをすべて覚えていられたのだ)。そのため、「規律」の項目を守るのにはずいぶん苦労した。
何度も過失を犯しては自分に腹を立てたが、なかなか成長せず、むしろ前よりも規律を守れなくなっている気がすることも多々あった。「私には無理だ。誰にでも欠点はあるんだから、多少だらしなくても別にいいじゃないか」とあきらめかけたほどだ。