幸せの秘訣は何か。「アメリカ建国の父」と呼ばれるベンジャミン・フランクリンは、79歳のときに書いた自伝で「13の徳目リスト」を公開している。彼は「このリストのおかげで、幸福な人生を手に入れられた」という。『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』(サンマーク出版)より、一部を紹介しよう――。
ベンジャミン・フランクリン
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“理性”では過ちは防げない

私が「道徳的に完璧な人間」になることを決意し、大胆かつ困難な計画を考え出したのはこの時期のことだ。私の願いは、どのような状況下においても過ちを犯さずに生きていくことだった。

人の過ちは、生まれもった性質、長年の習慣、友人の誘惑といったさまざまなことに起因するので、そうしたすべての原因を克服する必要があった。私はすでに、何が正しくて何が間違っているかを理解していた(少なくとも理解していると思っていた)ので、その気になれば、常に正しいことをして、間違ったことはしないというのも不可能ではないと思えた。だがまもなく、私の試みは予想よりもはるかに大変なものだとわかった。

ひとつの過ちを犯さないように注意していると、気づかないうちにほかの過ちを犯してしまう。油断すると悪い習慣が身についてしまうし、自分の生来の性質を理性で抑え込むのは簡単ではない。やがて、私ははっきりと理解した。

「完全な道徳性を身につければ、より有意義な人生を送れる」と頭でわかっているだけでは、過ちを防ぐことはできない。自分はけっして道を間違えないという確固たる自信を手にするためには、まず悪い習慣を断ち切り、よい習慣を身につけなければならないのだ。そこで、ある方法を考えた。

完全な道徳性を身に付ける“13の徳目”

私が読んできた本のなかには、さまざまな「徳」のことが書かれていた。だが「徳目」の数は本によって異なった。ひとつの徳目にさまざまな意味をもたせている場合もあれば、少ししか意味をもたせていない場合もあった。

たとえば、「節制」という徳目がある。ある著者はこれを「飲食」に限定しているが、別の著者は、飲食に限らず肉体的・精神的なあらゆる欲求を含めて論じている。

私は各項目をできるだけシンプルにしたかったので、徳目の数を多くして、意味は狭い範囲に限定した。私がつくった徳目の数は全部で13になる。その13の徳目のなかに、当時の私にとって必要な、あるいは望ましいと思われた徳がすべて含まれている。また、それぞれの徳目には短い戒律をつけた。それらを読めば、私が13の徳目にどのような意味をもたせたかがはっきりとわかるだろう。

それぞれの徳目の名称と戒律は次のとおりだ。

1 節制
飽きるまで食べないこと。酔うまで飲まないこと。

2 沈黙
自分と他人に無益な話をしないこと。むだな会話は避けること。

3 規律
物は場所を決めて置くこと。仕事は時間を決めてすること。

4 決断
やるべきことがあればやろうと決心すること。決心したことは必ずやりとげること。

5 倹約
有益でないことに金を使わないこと。つまり浪費をしないこと。

6 勤勉
時間をむだにしないこと。常に何か有益なことをして、むだな行動はすべて断つこと。

7 誠実
嘘をついて人を傷つけないこと。無邪気かつ公正に考え、話すときも同じようにすること。

8 正義
他人の名誉を傷つけたり、自分の義務を怠ったりと、不実な行いをしないこと。

9 節度
極端を避けること。腹を立てるに値するような侮辱を受けてもじっと耐えること。

10 清潔
身体、衣服、住居の不潔を許容しないこと。

11 平静
ささいなこと、よくある出来事、避けがたい出来事に取り乱さないこと。

12 純潔
性交は、健康あるいは子づくりのためにのみ行うこと。快楽に溺れて頭を鈍らせたり、健康を損なったり、自分と他人の平穏や信用を傷つけたりしないこと。

13 謙虚
イエスとソクラテスを見習うこと。