アル・ゴアの働きかけで潜水艦データを公表

気候変動問題を世界に広め、運動を指導してきたリーダーとして有名なのが米国副大統領であったアル・ゴア(Albert Arnold Gore Jr.)さんでしょう。『不都合な真実』という題名の映画が世界で上映され、大きな社会問題となり、環境活動家として2007年にノーベル平和賞を受賞しています。

石原敬浩『北極海 世界争奪戦が始まった』(PHP新書)

そのゴアの著作『不都合な真実』に海軍と気候変動、北極海問題を知る鍵が記載されています。「潜水艦は警報に接し速やかに浮上、ミサイル発射を行わなければならないが、氷を割って浮上するには厚さ3フィート(約1m)以下でなければならない」「過去50年間米海軍はそのデータを収集してきたが、それは極秘(Top Secret)だった」と状況を説明します。そして北極海の氷が減少し、厚さも薄くなってきているという事実を、科学者をはじめ、世間に知らせるべきであると考え、海軍とCIA(米中央情報局)に働きかけ、作戦に支障のないかたちでデータを公表させたのです。

このように、気候変動の最前線でありながらも軍事活動、核戦略の最前線でもあるため、南極のように世界で仲良く科学調査、といかないところが北極の難しさです。

北極圏・北極海の定義とは

改めて地域の確認を行います。北緯66度33分より北の地域が北極圏と呼ばれる地域です。地球の自転軸は、太陽の周りを回る公転面に対して23度27分傾いています。90度−23度27分=66度33分、という計算の結果の数字です。

この数字が何を意味するかというと、夏には太陽が沈まない白夜、冬には太陽が昇らない極夜という現象が見られる、ということです。それよりも北にある地域が北極圏、ということです。

そのため年中気温が低く、氷と雪に囲まれた環境的に厳しい場所ですが、先住民族をはじめ、およそ400万人の人々が暮らす地域です。ホッキョクグマ、ホッキョクキツネ、トナカイ(カリブー)など北極特有の生物がむ、オーロラ輝く特別な世界です。

サンタクロースの故郷で、清らかで沈黙の世界のイメージとなるのでしょうが、実際には先に述べたとおり、軍事的緊張の最前線。イメージギャップがありすぎです。