人間の活動が元凶なのは「疑う余地なし」
気候変動、地球温暖化の原因が人間の活動に伴うものなのかどうか、トランプ大統領が否定的であったのは有名な話です。世界的な議論でも、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第1次報告書では「気温上昇を生じさせるだろう」という弱めの表現でした。しかし1990年以降、様々な観測結果が出てシミュレーション方法も発達し、研究・検証が進みます。2021年の第6次報告書では「疑う余地がない」と断定的な表現となりました。
では、温暖化で北極海の氷がどのように変化してきたのでしょうか。
NASAのホームページに、気候変動の項目があり、その先に進むと北極の特集ページがあります。そこでは宇宙から見た北極海の氷の状況、数十年の変化を数分で見えるようにし、動画で閲覧できるようにしてくれています。衛星による北極海の氷の観測を開始した1979年からの氷の状況変化がよくわかります。
10年ごとに約13%ずつ氷の面積が減少
様々なデータから、北極海の氷面積は10年ごとに約13%ずつ減少していると報告されています。
また、単に面積が減少しているだけではなく、多年氷(夏でも融けることなく複数年継続する氷)が急速に減少しているのです。氷は何年も凍ったままであれば圧縮されて融けにくく硬い氷になるのですが、多年氷がどんどんと減少し、密度の薄い1年氷が増えています。こういった温暖化の影響で、夏の北極海の海氷は2050年までに消滅することが確実視されているともいわれています(Gloria Dickie, “Loss of Arctic summer sea ice ‘inevitable’ within 30 years, report says”, Reuters, November 8, 2022)。
こういったニュースや議論において、特に北極では温暖化のマイナス面よりも、それに伴って氷が融けることにより航海が可能になる、資源開発ができる、という期待のほうが大きく働いています。沿岸国のみならず域外国もその時に備えて、科学的あるいは資源探査活動を実施する、権益確保のために軍事力を展開する、あるいは基地を整備する等の動きを進めています。そういった各国の活動、その摩擦が安全保障上の問題となりつつあるのです。