沿岸国5カ国+周辺国3カ国

北極点を中心に広がる、北アメリカ・ユーラシア両大陸に囲まれた海域は北極海と呼ばれ、沿岸にはカナダ、米国、デンマーク(グリーンランド)、ノルウェー、ロシアの5カ国があります(「北極海沿岸国」)。これらにフィンランド、アイスランド、スウェーデンを加えた8カ国のことを「北極圏国」と呼んでいます。これらの国々がまあ、北極問題に関するレギュラー、準レギュラーというところでしょうか。

南極には南極大陸が「で〜ん」と存在するのに対し、北極はユーラシア大陸と北米大陸に囲まれた海「北極海」が真ん中にある、これが最大の違いです。そして海には海特有のルールがあり、それに伴った利害・利権の対立もあります。

北極海は平均深度1330m、最大深度5440mの深い海で、海底にはロモノソフ海嶺かいれいという、ユーラシア大陸から北極点経由・北米大陸まで続く海の中の山脈あり、盆地ありの複雑な地形をした冷たい海です。

海ならば海のルールで決める、これがのちのち国家間の対立、紛争問題に影響します。その際、どういう視点、立場に立って「海」を考えるかで、扱いが大きく変わります。

環境問題から安全保障問題へ

気候変動・地球温暖化問題、これは当初、環境問題として扱われてきました。しかし、旱魃かんばつや洪水など異常気象が難民問題や治安問題と結びつくと、安全保障上のリスクとして議論されるようになってきます。

国連気候変動枠組条約は1992年に採択され、1995年にベルリンで第1回締約国会議(COP1)が開かれました。1997年に京都で開かれたCOP3では、締約国に温室効果ガスの排出量削減を義務づけるよう求めた国際協定「京都議定書」が採択されました。

しかしながら、産業革命以来の温室効果ガスの多くは欧米先進国が昔から排出してきたものであり、アジアや中東、アフリカの新興国も一律に削減という話はすぐにはまとまりません。しかし現実問題として、度重なる中東やアフリカでの旱魃、食糧不足や水不足が原因となり内戦が激化、大量の難民が欧州に押し寄せました。気候変動が安全保障問題として強く意識され、議論されるようになります。