処方箋②「変化が歓迎される」と共有する
〈変化抑制意識〉において、職場での変化を抑制していたのは「実現するのは大変だろうな」という少し先の未来のコストへの予期です。
なので、そうした予期を「そもそも発生させなくさせる」という施策も考えられます。大変だろうと思わせない、つまり「変化が歓迎されるだろう」という予期を発生させればいいということです。それがここでいう「挑戦共有」系の施策です。
さて、こうした「挑戦共有」のために大きなハードルとなるのは、「目標管理制度」の形骸化です。
目標管理制度は、70年代頃からアメリカから輸入され、90年代後半の成果主義導入によって中小企業含め大半の企業に導入されています。9割以上の企業にあるという調査も存在します。
目標管理制度は、基幹の人事制度と日々の従業員の仕事との極めて重要なタッチポイントです。ジョブ型だろうが目標管理制度とそれに基づく評価制度が形骸化していてはなんの意味もありません。
例えば、通常の業務目標とは異なる「チャレンジ目標」の項目を作り、組織全体で公開していくこともできるでしょう。実際に、サッポロビールは目標管理制度において「ストレッチ・ゴール」の記載欄を新設し、結果を問わず挑戦する行動だけを評価する取り組みを始めています。
また、目標管理におけるメンバー間の「目標の公開」も、いくつかの大手企業で見られる取り組みです。また、MBO(Management by Objectives)の代替として一部に導入されているOKR(Objectives and Key Results)といった目標管理手法も、挑戦的な目標を全社で共通のものにしようとする発想は同根です。
他にも、組織的サーベイで人々の実際の意識を可視化することもできるでしょうし、経営層からの強いトップメッセージを発することによって認知を変えていくこともできるはずです。リスキリングで学んだスキルや知識が本当に現場に生かされるには、このような組織による「仕掛け」が必要不可欠なのです。