ボスも「5週間の年次休暇」を消化している

公立総合病院 脳神経外科医 Aさん

日本勤務歴12年間、フランス勤務歴3年間

日仏の大学病院間の協定で、研修医(レジデント)として派遣されていますが、実質的には専門医(チーフレジデント)として働いています。大学病院の常勤教授のもとに配置され、当直はなし。契約は「公立医療職の労働協約(IDCC5022)」に準じ、残業込みで週平均55時間ほど勤務しています。

うちの病院では、常勤教授の手術は毎週火・水・金曜日にやると決まっていて、脳神経外科全体の予定手術は毎日2〜4件ほどで組まれています。平日は朝のカンファレンス(会議)から始まり、外来と入院患者の回診。木曜日は主にデスクワークの日です。

年次休暇は法定通りの5週間で、私以外もみな、消化しています。ボスの教授もです。3連休も休むのが難しい日本の状況とは違いますね。なぜフランスでは可能なのか。それは、日常の働き方を見ると理解できます。

写真=iStock.com/MIND_AND_I
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分業が徹底していて、雑務が少ない

まずフランスの勤務医は、とにかく雑務が少ない。それは医師・看護師以外のスタッフとの分業が徹底しているから。常勤医になると基本的に、仕事は手術・外来・病棟診察・カンファだけで、それ以外の事務仕事、紹介状や書類関係の書類もすべて秘書が担います。外来と手術のスケジューリングも、カレンダーアプリを使って秘書が管理し、検査オーダーや結果の受け取りも秘書がします。常勤教授には一人につき一人、専門医には二人につき一人、秘書がつきます。

専門業務以外の分業は、看護師でも同じです。手術室の清掃や手術道具の消毒を行うのは日本のように看護師ではなく、他に専門の人員がいます。手術室から病室に患者を移送するのも、力自慢の専用人員が2、3人いる。院内業務の分業が、医師と看護師以外の多くの人員に担われているのです。