50代こそ、専門性に磨きをかけるとき

もちろん、多くのサラリーマンはスペシャリストではなくゼネラリストとしての仕事が求められてきました。今風の言葉で言えば、ジョブ型ではなくメンバーシップ型の職場で働いてきたからです。そんな中にあっては、自分で「この仕事のプロだ」と言い切れる人はなかなかいないでしょう。

でも50代に入ったら、そこからは社内でのキャリアパスが重視されて部門を超えた異動が増えるというケースはまずないと考えるべきです。だとすれば、50歳からは自分の仕事の専門性に磨きをかけていけばいいのです。

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戦力外通告がチャンスになった

私は50歳手前までは営業の仕事をずっとやってきました。証券会社は営業が花形の仕事です。ところが50歳を前にして「年金部門」への異動を命じられ、その後は定年までずっと同じ部署でした。つまり、ある種の戦力外通告を受けて、社内ではあまりの当たらない部署へ異動になったのです。これは一般的にありがちなパターンのような気がします。

ところが、それまで全く経験のなかった「年金」に関する仕事をやってみると意外と面白く、結構夢中になっていきました。結果的には、証券会社としてはあまり経験することのない外部の人たちとの接触、具体的には同業の証券会社ではなく生保や信託といった異なるカルチャーの人たち、そして厚生労働省や企業年金連合会といったほとんど証券ビジネスとは縁のない分野の人たちと知り合うことができました。

もちろん年金部門に異動して以降は昇格も昇給もありませんし、ボーナスも減りましたが、その代わり、得難い経験をすることができたのです。

その時の経験と人脈が、定年退職後に仕事をするにあたって、非常に大きく役に立っています。それどころか、現役時代のツテで、定年になった時には複数の企業から「うちに来ないか」というお誘いを受けました。これは年金部門に異動し、そこでそれまで経験したことのない仕事に取り組むことで専門性を磨いた結果だろうと思っています。

もし戦力外通告を受けていなければ、今の立場はなかっただろうと思います。