でんでん太鼓に隠された裏の意味

これには、元気良くお客様をお迎えするという「表の意味」があります。

ただ、当然ですがお店に初めてくるお客様は、このでんでん太鼓の音にびっくりします。ノリのいい人は、「うわ、何だ、何だ」などと反応しますが、時には扉を閉めて、帰ってしまうお客様もいました。

それでもでんでん太鼓を鳴らしていたのは、実は、お客様に対して「裏の意味」があったからです。

それは、お客様が酔っているのか、酔っていないのかを見分けるため、という意味です。でんでん太鼓と鐘の音に対するお客様の反応を見て、大将は、お客様の酔っぱらい具合を判断していたのでした。

極度に酔ったお客様を入店させると、かなりの確率でトラブルが起こります。隣のテーブルの客と喧嘩になってしまったり、店のものを壊してしまったり……。もちろん、そうなるとお酒や食べものも進まず、売上にもなりません。

そこで、大将はお客様がかなり酔っていると判断した場合は、「予約が入っているので」と断るのです。また、一見さんのお客様の場合は、他店で飲んできているお客様はお断り、入れたとしても30分程度で帰ってもらうというルールもありました。

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インパクトのある儀式で熱狂的なファンを作る

さらには、このでんでん太鼓には、もう1つの意味もあったと思います。

このでんでん太鼓は、お客様が帰る時も〆に鳴らします。常連さん達は、この「でんでん太鼓と鐘の音」を聞かないと、お店に来た気がしないといっていました。いわば、儀式のようなものだったのです。

このでんでん太鼓と鐘の音は、必要がないといえば必要ないものですが、お店ならではの「儀式」を作ることで、お店の個性が出ます。

飲食店では、どんなジャンルでもライバル店が多いですし、特に吉祥寺のような人気エリアでは長く続けることができている店舗というのはわずかです。

そういった中で焼き鳥屋を続けることができた理由の1つが、この最初のインパクトであり、これによってその他大勢のお店から抜け出すことで、熱狂的なファン(常連さん)を作ることができたからだと思っています。