ワインのテイスティングは店と客との信頼の儀式
ボトルワインを選ぶと、必ず、ホストのグラスにほんの少しだけ注ぐ「テイスティング」があります。
テイスティングといっても、「好き・嫌い」を見極めるためではなく、「品質が悪くなっていないかどうか」を確かめるためのものです。万が一にもカビ臭いなどの異変を感じない限りは、「これでお願いします」という流れになります。
ちなみに、ホストがテイスティングして「OK」となったら、ソムリエは、まずゲストのグラスに注いでから、ホストのグラスに注ぎます。ホストがテイスティングするのは確認のためであって、あくまでも優先されるのはゲストというわけです。
自分がテイスティングする立場になっても、何も緊張する必要はありません。「品質の確認のため」とはいえ、たいていは間違いないものが出されるはずなので、ワインを楽しむための1つの通過儀礼と考えて、堂々と振る舞いましょう。
「乾杯」の一番の心得は「顔」である
ワイングラスは繊細です。乾杯ではグラスをカチンと合わせず、自分の胸の高さくらいまで軽く持ち上げるのが正式です。
ここで私が何よりも重視しているのは、表情です。乾杯は、「食べましょう」の合図ではなく、心の表現です。相手とちゃんと目を合わせ、ニッコリ笑ってグラスを持ち上げる。
こうして「おめでとう」「集まれてうれしい」「お会いできて光栄です」などの気持ちを通わせることを一番に考えてください。
場合によっては、グラスを鳴らそうとグイグイ差し出してくる人もいるかもしれません。そこで頑なに拒否するのは無粋というもの。相手の気持ちを汲みましょう。グラスを傷つけないように気をつけながら、そっと合わせればよいでしょう。