「高校時代の友人」からの電話が要注意な理由

一流秘書は、自分のボスの人脈を頭に叩き込んでいる。「田中と申しますが、社長の鈴木さんはいらっしゃいますか」という電話があれば、彼らは瞬時に記憶のなかから「素材メーカーの田中専務」を思い出し、この時期、鈴木社長に電話があっても不思議ではないかどうかを考える。自分のボスのビジネス界におけるポジション、人脈、相手がコンタクトをとる必然性などを総合して、面談を申し込んできた人が信用できるか、できないかを判断している。今回取材した一流秘書が人を見分ける際にもっとも多用していたのが、この社会的コンテクスト法だった。社会的コンテクスト法は主に3つある。

《同窓生コンテクスト》

「社長の鈴木さんの高校時代の知り合いの田中です」などでコンタクトをとってくるケース。原則的には要注意だ。ほんとうに社長と親しければ、自宅電話やプライベートなメールアドレスに連絡をするはずで、わざわざ会社に電話をかけてくるのは不自然だからだ。こういう場合は、最初の電話を受けたときに「鈴木は会議中です。こちらから連絡をさせていただきますので、ご連絡先をお教えください」などと言って、社長に確認する時間をつくる。

《ビジネスコンテクスト》

秘書が把握しているボスのビジネス人脈のなかに、面談希望者の名前がなければ要注意。しかし、ボスが出席したパーティなどで多数の人と接触して、人脈がどんどん広がっている可能性もあり、名前を聞いたことがないからというだけで門前払いもできない。

また、パーティや知人の紹介でボスが顔を合わせた人のなかには社会的に名前が知られた人がいるかもしれないが、有名人というだけで信用はできない。この有名人が稀代のペテン師だったという例もあるからだ。

ボスが社長や会長の座をおりて、取締役などになったときも注意が必要だ。ボス自身が重い責任から解放され、脇が甘くなっている。相手に不愉快な思いをさせないように気をつけながら事前に相手の用件を正確にヒアリングするなど、一流秘書はみな高いコミュニケーション能力を身につけている。