再雇用する企業側のメリットは2つ

再雇用する企業側のメリットは、文字通り、いったん退職した人を再び雇うことで次の2つが挙げられる。

① 定年延長に比べて給与の減額が可能(加えて高年齢雇用継続基本給付金を受給できる)
② 管理職のポストを外したり、仕事の役割を変更したりできる

つまり60歳定年を維持し、60歳以降の人件費を極力抑制したいとの思いがある。

パーソル総合研究所の調査(2021年5月28日)によると、定年後再雇用者の約9割が定年前より年収が下がり、全体平均で年収が44.3%も下がっている。下がり方も激しく、半分程度に減った人は22.5%、半分以下に減った人は27.6%もいる。2人に1人は半減かそれ以下なのだ。

当然のことながら、年収もそれほど高くない。60代前半(60歳以上64歳以下)の継続雇用者(フルタイム)の年収の平均は374万7000円。

「400万~500万円未満」20.4%
「300万~400万円未満」32.3%
「200万~300万円未満」16.5%

といった数字になる〔労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」2020年3月31日発表〕。

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しかも、この中には企業年金や公的給付(在職老齢年金、高年齢者雇用継続給付)も含まれており、実質の年収はさらに低くなる。例えば、大手通信企業グループには現役時代の半分程度の年収300万円未満の再雇用者も少なくない。

年収が実質的に定年前の半分程度に一律に下がるうえ、管理職は役職も外れ、仕事の中身も現役世代のじゃまにならない程度の補助作業に従事している人も多い。その結果、どんなにがんばっても給与が上がらない、あるいはまともな仕事を与えられず、働きがいが感じられずにモチベーションが下がる人も少なくないといわれる。

さらにいえば、65歳までは雇ってくれるが、それ以降も雇ってくれる保障はない。改正高年齢者雇用安定法(21年4月施行)によって70歳までの就業機会の確保が努力義務となったが、あくまで努力義務であって、働きたいと思っても認められない可能性もある。