安心感を育む私立の「同質性の高さ」が逆効果になるケースも
私立や公立の中高一貫校で学ぶメリットは少なくありません。
「6年間を通じて同じ仲間と過ごすことができ、人間関係を深められる」
「14~15歳という、人生で最も心が不安定な時期に受験を経験せずにすむ」
「その学校の理念に即した濃密な教育を受けることができる」
私立の場合、その学校の教育理念に沿った教員を集めて、6年間、一貫したポリシーで生徒を育てることができます。校長に教員の選択権がない公立にはこれができません。
また、私立には、その学校の教育理念に賛同した保護者の子どもが集まってきますので、同質性が高まります。公立のように「どんな子がいるかわからない学校」にはなりにくいのです。
けれども、次のような点がデメリットになることもあります。
●中・高でリセットできない
高校受験をする場合、中学校でいじめられていたり、友だちに恵まれなかったりしていても、高校に進んで周囲の顔ぶれが変わったとたん、自分のキャラクターを一新して「高校デビュー」し、急にイキイキし始めることはよくあります。15歳での受験はたしかにストレスフルですが、「人間関係のリセット」のいいチャンスでもあるのです。
中高一貫校では、6年間同じメンバーで過ごすためにこのリセットが難しくなります。
●多様な人たちとのコミュニケーション能力を磨く機会が減る
社会に出て必要になるのは、会社の同僚や上司とうまくつきあう、初めて出会う取引先やお客さんと関係を結ぶ、といった「多様な人との人間関係を築く力」です。
一般の公立中学のいいところは、何と言ってもこの「実に多様な、さまざまなタイプの友人とつきあっていく体験」ができることです。公立中学の生徒は、勉強がすごくできる子から苦手な子まで、裕福な家庭の子から貧乏な家庭の子どもまでと、実に多種多様でまさに「実社会の縮図」です。
これに対して、私立には、同程度の学力で、同タイプの子どもが集まりやすくなります。この「同質性の高さ」が私立の大きな魅力であり、安心のもとでもあるのですが、逆に見れば、公立中で体験できる多種多様な人とかかわるチャンスを失ってしまうことにつながるわけです。