子供の将来を考えたとき、中学受験はした方がいいか。明治大学文学部教授の諸富祥彦さんは「私立に進むと『上には上がいる』現実に直面する。打たれ弱いタイプの子供は、中学受験を控えた方が賢明だろう。子供の気持ちもよく聞かずに中学受験をさせようとするのはとても危険だ」という――。

※本稿は、諸富祥彦『男の子の育て方「結婚力」「学力」「仕事力」を育てる60のこと』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

数学を勉強している学生
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子どもの気持ちもよく聞かずに中学受験をさせるのは危険すぎる

小学校3、4年生になると、進学塾から「公開模試」のダイレクトメールが届きます。

「受験を本気で考えているわけではないけれど、ちょっと腕試しで受けさせてみよう。もしかしたら、けっこういい線いくかもしれないし。……あら? うちの子、全然できないわ。このままじゃ、有名校どころか、中堅以下の中学も厳しいレベルじゃない! 公立に行っても落ちこぼれそうだし……。とりあえず、塾に行かせなくちゃ!」

お母さんの気持ちの移り変わりは、こんな感じではないでしょうか? 実際、こうして入塾を即決してしまうご家庭は多いのです。

でも、ちょっと冷静になりましょう。

こうした親の焦りから、子どもの気持ちもよく聞かずに中学受験をさせようとするのは、とても危険です。男の子のなかには、明らかに中学受験に向かないタイプの子がいるからです。

あなたのお子さんが、負けん気は強いけれども傷つきやすく、打たれ弱いタイプの場合には、中学受験は控えたほうが賢明かもしれません。

たとえば、聞けば誰もがうらやむ難関私立中学校に受かったツトムくん。小学校のときは、誰をも寄せつけないトップの座に君臨していましたが、難関中学に入ると、いくらがんばっても成績は中の下止まり。

「ボクは自分のことを、ダイヤモンドだと思ってた。でも、実は石ころだったんだ」と言います。「オレってこの程度の人間だったんだ……」とすっかり落ち込み、自信を失ってしまったツトムくんは、不登校になってしまったのです。

これまでずっとトップだったのが「上には上がいる」現実にはじめて直面したのですから、一時的に落ち込むのは当然です。でも、肝心なのはそのあとです。「けっこうきびしいなあ」「でも難関校の中の下なんだからまだいいほうか……」と現実を受け入れて、立ち直る「打たれ強さ」が問われるのです。