子育てをしていて不安が生じたとき、どうすればいいか。児童精神科医のさわさんは「どこからどこまでが自分の不安で、どこからどこまでが子どもの問題なのか、分けて考える必要がある。これを混同して苦しんでいる親子は多い」という――。
※本稿は、精神科医さわ『児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
いじめについて話が一致しなかった親子
親御さんの中には、子どもの身に起こることを自分自身の不安としてとらえてしまう人もいます。
あるお母さんが「中学生の子どもがいじめられて苦しんでいるから、診断書を書いてほしい」と診察室に来られたことがありました。
子どもの診断書を書くためには子ども自身をみなければいけませんから、その中学生の女の子をクリニックに連れて来てもらったのですが、その子の話と、お母さんの話をよく聞くと、2人の話が一致しない点があったのです。
お母さんは「この子はとても傷ついていて、もう夜も全然寝られないし、ご飯も食べられていないんです」と言っている。
けれども、その子に「どれくらい眠れないの?」と聞くと、「いや、寝られてますし、ご飯も食べられています」と冷静な返事が返ってくるのです。
どういうことかとお母さんのほうを見れば、ずいぶん怖い顔をして子どもを見て、何か合図を送っています。