※本稿は、ダニエル・ディック(著)、竹内薫(監訳)『THE CHILD CODE 「遺伝が9割」そして、親にできること わが子の「特性」を見抜いて、伸ばす』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
「子どもの行動」に遺伝子が与えている影響
遺伝子は、子どもがどれだけ口答えをするか、どれだけまじめに言いつけに従うか、どれだけ読書が好きか、どれだけ泣き虫か、さらには、サンタが家にやってくると聞いてどれだけパニックになるか、などといったことに影響を与えます。
本当なんですよ。私には6歳の姪がいますが、この子は家に誰かが入ってくることに恐怖を感じる子で、毎年クリスマスの夜には、「サンタさん、2階には上がってこないでね」というメモを家族で書くのです(もう一人の子どものことも考えた末、母親である私の妹が説得してたどりついた妥協案です)。
遺伝子は子どもの行動に大きく影響します。とはいえ、現実的にはその仕組みはどうなっているのでしょうか。
『なぜシマウマは胃潰瘍にならないか』(栗田昌裕・監修/森平慶司・訳、シュプリンガー・フェアラーク東京刊)などの著書で知られる研究者でベストセラー作家でもあるロバート・サポルスキーの「無の遺伝子」という論文が私は大好きです。
私は遺伝学の研究者ですが、サポルスキーがこの論文で述べたように、「○○の遺伝子」というフレーズが大嫌いです。
しかし、メディアはこのフレーズが大好きで、ニュースでもよく目にします。アルコール使用障害の遺伝子、うつ病の遺伝子、乳がんの遺伝子、攻撃性の遺伝子などなど。ところが、真実はもっと複雑なのです。
人間の遺伝子は約2万個しかなく、そのほとんどが目や耳、腕、動脈といったものを担当しています。人間の生態や行動様式のすべてに1個ずつ遺伝子が存在したとすれば、あっという間に数が足りなくなってしまいます。
ショウジョウバエでさえも約1万4000の遺伝子を持っていますが、人間の子どもはショウジョウバエよりもかなり複雑であることから、遺伝子の働きには何かもっと別のことが関係していると考えてよいでしょう。