「ねばならない」が多いほど子育ては苦しくなる

偏差値の高い学校に行かねばならない、友だちは多くなければならない、人に迷惑をかけてはならないとか、親御さんの中で「ねばならない」というものが多ければ多いほど、子育ては苦しくなるものです。

親御さん自身がそうやってがんばってこられた方であればあるほど、その「ねばならない」という思いが強くなり、「ねばならない」どおりにならない子どもを見て苦しく、また不安になるのです。

私が言いたいのは、ここでもそれは子どもの問題ではなく、親御さんが問題だと感じていて不安になっているだけという可能性があることです。

もちろん、さきほどのお母さんのように、わが子がいじめられたとか、仲間はずれにされたなどと聞くと、親として心配になるのは当然です。

ただ、子どもより親のほうが狼狽してしまうと、子どもが「お母さんを心配させちゃうから次から言うのをやめたほうがいいかな」と、言い出しにくくなってしまうことが児童精神科医としてはとても心配です。

どこからどこまでが自分自身の不安か、分けて考える

子どもに関する不安があるときは、どこからどこまでが親である自分自身の不安で、どこからどこまでが子どもの問題なのかということを分けて考える必要があります。

リビングルームで母親から励まされる子供
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

これまでは、偏差値の高い学校に行かせなければならないと思い込んで、成績の届かないわが子のことが不安だったけれども、よく考えてみたら、自分がそのように育てられてきたから、そう思い込んでいるだけだった。

子どもの問題ではなくて、自分自身の問題だったと気づけば、子どもに対する行動も変わってきます。

無理に偏差値の高い学校に行っても、入学後についていけずに自信をなくしてしまう可能性もあります。

それに単に偏差値の高い学校という基準でなく、子ども自身が好きなことを学べる学校や、性格に合った校風の学校という選択肢もあるかもしれません。

考え方はさまざまですが、まずお母さんが自分の不安の正体に気づくことが大切です。

漠然とした不安を具体化するというのは、不安を安心に変える方法のひとつとしてとても有効です。

そうすることで、自分自身の気持ちが楽になり、子どもへの接し方も変わってくるのです。

お子さんに漠然とした不安を感じている方は、まずは自分自身の不安と向き合ってください。

自分はなにがそんなに不安なのか、その不安はどこからきているのかな、と。親が自分自身と向き合う習慣をつけることで、子どものことで過度に不安にならず、冷静に問題に対処することができるようになります。