0円プラン廃止で課金ユーザーが増えれば経営が安定するとも言われたが、契約数が減ってしまっては元も子もない。

楽天モバイルの社員は約4600人なので、1人5回線の契約を取っても2万3000契約にしかならない。楽天グループ全体では1万8000人余りいるが、社員全員が契約を獲得しても、やっと9万契約だ。涙ぐましい企業努力も、焼け石に水の感はぬぐえない。

ついて回る「つながりにくい」という不評

もう一つ、楽天モバイルの財務を圧迫しているのは、基地局などの設備投資だ。累計で1兆円を超え、23年12月期も3000億円程度を見込んでいる。

携帯電話会社にとって自前の通信ネットワークは生命線だが、整備が大幅に遅れたことも、誤算だった。

当初から「つながりにくい」という不評がついて回り、自社ネットワークの人口カバー率が98%になっても、そのイメージを引きずったままだ。

契約数が増えず収益が上がらなければコスト削減が最重要課題になり、顧客窓口として拡大してきた実店舗「楽天モバイルショップ」の削減に乗り出した。業務提携する郵便局内に設置した約280店舗のうち約200店舗を4月末までに閉じることになった。全店舗の2割近くに当たる。

楽天モバイル 渋谷公園通り店、2021年7月22日撮影(写真=Antonio Tajuelo/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

今後は、ネットマーケティングに注力するという方針転換で、全国各地で「閉店ドミノ」が起きているともいわれる。

だが、その程度のコスト削減効果は、巨額の赤字に比べれば微々たるもの。むしろ、ネットに疎いシニア層や主婦層へのアプローチを放棄することにつながってしまう。

財務改善のため、楽天グループは4月中にも楽天銀行を東証プライム市場に上場、当面1000億円規模の資金を調達する見通しだ。だが、1兆8000億円程度に膨れ上がった有利子負債を手当てするには、とても十分とは言えない。

幹部社員の詐欺事件というつまづき

そんなときに追い打ちをかけたのが、楽天モバイルの基地局の物流全般を統括していた元部長が起こした巨額の詐欺事件だ。

基地局の整備事業をめぐり水増し請求した業務委託料を業者に支払わせ、還流して詐取した罪で、元部長は逮捕され、3月24日に起訴された。基地局の建設を急いでいたドタバタに乗じて水増し分を事業費に紛れ込ませる手口だったが、不正支払いの総額は約300億円に上り、そのうち約100億円が水増し分だったという。

社の幹部が半端ではない金額をふところに入れて赤字の一因を作っていたことは衝撃だった。

ユーザーが支払った通信料金が、一幹部の膨大な不動産や高級車に化けてしまったのだから、怒りを通り越してあきれるしかない。

何より、不祥事に気づかずに放置していたずさんな経理処理が露見したことで、楽天モバイルのブランドイメージは地に落ちてしまった。一段と顧客離れが進まないか、危惧される。