また、端末をiPhoneに選んだ新規契約者には、大手3社よりも安値で提供し、さらに最大2万4000円相当のポイントをプレゼント。旧機種を下取りすれば1万円分相当を上乗せする。

さらに、住宅のネット向けサービス「楽天ひかり」に加入すれば、4万円の現金を還元する。いったん契約すれば、楽天市場で買い物をした時のポイントが最大3倍になる特典もある。

コンテンツの利用もオススメしている。雑誌読み放題の「楽天マガジン」や音楽聞き放題の「楽天ミュージック」などは3カ月間無料で、無料期間が終わった後も大幅に割り引く。

おとく感を前面に打ち出して「楽天経済圏」への囲い込みをめざす戦術は、利用者の気持ちをくすぐりそうだ。いずれも利用条件には制約があるので注意が必要だが、大盤振る舞いには違いない。

ただ、携帯電話市場は飽和状態。シニア世代にもスマートフォンは行き渡っており、新規需要は、初めて携帯電話をもつ若年層やプライベートに2台目が欲しい人などに絞られる。このため、他社からの乗り換え(MNP)が狙い目になるが、安さだけでなく総合的なプラス効果がなければ、他社の利用者を引きはがすのは容易ではない。

三木谷氏が「楽天市場」の出店者に“お願い”

「今年のテーマは、モバイル、モバイル、モバイル、モバイル」

「楽天市場」の出店者約1500人を前に、三木谷氏が訴えたのは、ECビジネスの展望ではなく、モバイル事業への協力だった。1月末のイベント「楽天新春カンファレンス」でのことだ。

楽天市場の約5万6000店舗で、1店舗あたり5人が楽天モバイルと契約すれば「25万人の強力なサポーターが作れる」と力説。楽天市場の発展には楽天モバイルの貢献が欠かせないと強調した。そして、「皆さんも、携帯を楽天に変えていただきたい。法人契約も楽天モバイルに変えていただきたい」と“お願い”したのである。

だが、直ちにECビジネスと結びつかない携帯電話の勧誘に、出店者たちの反応はいまひとつだったようだ。

2月末には、楽天モバイルの協力者に向けたイベントで、上限が月額2980円(税抜き)という安さをアピールしたうえで「世の中に不可能なことはない」と熱弁を振るった。

それは、苦境にあえぐ三木谷氏の悲痛な叫びにも聞こえたが、とかくままにならぬが浮世の常だ。