好調な事業の黒字をモバイルが一気に食いつぶしている
楽天の株価下落が止まりません。2021年3月に上場来最高値の1545円を付けて以降、右肩下がり一辺倒。直近では四半期ごとの大赤字決算発表の都度株価を下げ、今や500円前後を行ったり来たり。最高値の3分の1以下になってしまった、という体たらくぶりなのです。
楽天の株価を引き下げているものは、楽天モバイルの業績不振に尽きます。モバイル事業準備段階の19年決算からグループ決算の赤字化が始まり、サービススタート後の20年決算からは3期連続で1000億円を超える大幅赤字を計上。
直近の23年1~3月の四半期決算でも営業損益で761億円の赤字を計上していますが、モバイル事業単体ではこれを上回る1026億円の赤字となっています。つまり、好調なインターネット事業や金融事業の黒字を、モバイル事業が一気に食いつぶしている構図が見てとれるのです。
そもそも、楽天が第4の通信キャリアとしてモバイル事業に名乗りを上げたのは、この事業で大きな利益を得ようと思ってのことではありません。ECビジネスからスタートした楽天は、新規事業の立ち上げや企業買収によってビジネス領域を着々と広げていきました。
そして、ポイント・サービスやキャッシュレス決済をキーにして、利用者を楽天ビジネスに囲い込む「楽天経済圏」を形作ってきたのです。各サービスを有機的につなげ、経済圏を完成させるための重要なピースとしてどうしても手に入れたかったものが、モバイル事業だったのです。
あまりにも大きい「3つの誤算」
このような狙いの下、20年4月に「第4の携帯キャリア」として鳴り物入りでスタートしたはずの楽天のモバイル事業が、なぜ巨大な「お荷物事業」になってしまったのでしょう。そこには、楽天グループを創業から発展軌道に乗せてきた三木谷浩史同社会長兼社長の野心に、あまりにも大きい3つの誤算があったと考えます。
まず、ひとつ目の大きな誤算は、基地局設置に関するものです。つまずきの始まりはモバイル事業スタート前、基地局設置による通信網構築を甘く見てその整備が大幅に遅れたことでした。監督官庁の総務省は、遅々として進まぬ受信状況改善に業を煮やして、19年10月の開業予定に待ったをかけたのです。
これは明らかに、国の認可業務である通信事業を舐めていたと言えます。楽天モバイルは開業の半年先延ばしを余儀なくされ、期待の「第4の携帯キャリア」のイメージは、いきなり大きく損なわれることとなりました。