エスカレートする犯罪
その空気が、茨城の農村で暮らすベトナム人たちに伝播していく。
「コロナになってから一気に犯罪がエスカレートしたよな」
倉田さんが言う。盗難や無免許運転、コロナの給付金詐欺。一見するとカタギの食材店が儲けを申告せず地下銀行経由でベトナムに送り、脱税していることもある。
ちゃんとした在留資格を持っている経営者同士でも、犯罪まがいの争いが激化しているそうだ。
「あるベトナムの店のまわりに似たような店を建てて潰そうとしたり、フェイスブックページをハッキングしたり。フィッシングメールを送り付けたり、悪評をネットで書き散らしたりね」
農業を維持していくために「フホー」が必要不可欠
在留資格のあやふやな人たちは、正規の労働力である技能実習生に置き換わっていくのだろうか。今後茨城県の「ベトナム人勢力図」はどうなっていくのか。
「フホーに関しては、あまり変わらないだろう」と浜田さんが言う。「彼らの摘発に、入管はともかく警察が乗り気ではないと聞いています。茨城の農業を維持していくために、フホーが必要不可欠になってしまっているからです」
これは製造業でも聞いた話だった。倉田さんも頷く。
「あまり大々的に摘発すると、作物がつくれなくなっちゃうからね。国を挙げて食料自給率を上げていこうとしていて、茨城のような農業県にはだいぶ税金も突っ込んでる。だから大目に見ようという部分もある」
日本の農業は、こんな危ういバランスの上に成り立っているのである。