「誰か」が動いてくれるのを待っていてはダメ
もちろん、「DXは必要ない」と判断することも、立派な経営判断です。会社の特性によっては、それが正しい場合もあります。ところが多くの場合、DXを必要だと思っていても、行動に踏み切れないのです。
経営者に話せば、「行動したいと思います、担当者とよく話してください」と言い、担当役員や部門長などに話せば、「実施したいが、社長を説得するのは難しい」「ほかの部署からよく思われない」と話します。やる気がないのかと思って話をしてみると、危機感もやる気もあるのです。
ではなぜ動かないのかと言うと、どうやら、「自分が言い出して、先導役にはなりたくない」という心理が働いているようです。「社長が言い出してくれないからですよ」「現場が言い出してくれたら……」と、皆、誰かが動いてくれるのを待っているのです。これではダメです。「誰か」ではなく「あなた」自身が手を挙げ、主体的に行動していくべきです。
周りへの「パフォーマンス」で終わる会社も多い
最近、新聞や雑誌でも「当社はDX企業に転換する」「当社はデジタル社会に対応し、事業転換する」と話す経営者が増えてきました。その力強い言葉から、日本のDXの遅れを取り戻せるのではないかと、つい期待をしてしまいます。
しかし現実には、マスコミや株主に対するパフォーマンスに終わっているケースも少なくありません。内情を見ると、十分な投資や人材の育成・配置が行われていないケースも多く見受けられます。これでは、到底DXを実現することはできません。なぜこんなふうになってしまうのでしょうか。
一言で言えば、経営者が信念を持たず、リスクを背負って行動していないからです。
経営者本来の権限を行使すれば、企業の方向性を変えることは十分可能です。逆に信念がなく、リスクも背負わないと、どんな言葉を発しても状況が変わることはないのです。