なぜ日本企業の「DX」は失敗続きなのか。DXコンサルタントの鈴木康弘さんは「DXとは、過去の成功体験を破壊して新しい価値を創造すること。慣れ親しんだ仕事のやり方を破壊する覚悟がなければ、絶対に成功しない。経営者が相当の覚悟を持って、自ら変革の先頭に立つ必要がある」という――。

※本稿は、鈴木康弘『成功=ヒト×DX デジタル初心者のためのDX企業再生の教科書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/D3Damon
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DXは単なる「業務改善」ではない

「DX」を成功させる最初のステップは、経営者の決意です。DXは、くり返しになりますが、経営者の決意と行動が成否を決めます。DXは、現状課題を解決する業務改善ではなく、「第二の創業」とも言える企業変革だからです。

経営者は、変革を成功させるために、4つの決意をする必要があります。具体的には、時代の変化を強く認識する、人任せにせず率先垂範で行動する、全社を巻き込む変革の覚悟を持つ、あきらめない心を持ち続けることです。

1 時代の変化を強く認識する
2 人任せにせず率先垂範で行動する
3 全社を巻き込む変革の覚悟を持つ
4 あきらめない心を持ち続ける

世界中のあらゆる企業が、目の前に迫っているデジタル社会の勝者となるべく、DXに取り組んでいます。約1万2000年前に農業革命でこの流れに乗れなかった部族は衰退し、産業革命のときに流れに乗れなかった国家・企業は衰退しました。

同じように情報革命の最中である今、DXに取り組まない企業は衰退の道をたどるしかないのです。この重大な局面を、どれだけの経営者が認識しているでしょうか。経営者の、この歴史的な変化に対する認識の強さは、近い将来、必ず大きな差となって表れます。強く認識し、既に動き出している感度の高い経営者の企業は生き残り、足踏みをしている経営者の企業は衰退していくのです。

「マネジメント」と「リーダーシップ」は全く別物

DXを成功させるために経営者は、率先垂範で行動していくことが大切です。DXとは、企業の過去の常識や成功体験を否定しながら大きな変革を成し遂げるプロセスとも言えます。その意味で、経営者の姿勢が重要になるからです。DXを起こすうえで知っておきたいのが、マネジメントとリーダーシップの違いです。

この2つは、意外と区別なく使われがちです。マネジメントとリーダーシップを各々解説し、比較してみましょう。

マネジメント型の人の源泉(原動力)は、高い地位や強い権限、明確に固まった規則であり、目の前の今(プラン)だけを見ています。そして、集団の秩序を乱すことなく、維持し続けることを使命に、命令して人を動かすタイプと言えます。

一方、リーダーシップ型の人は、周囲を惹きつける人間性をもとに、未来(ビジョン)を見て、人と同じ視点を持ちつつ、先頭に立ってメンバーを引っ張るタイプです。彼らは、未来に向けて常に「創造的破壊」を使命とし、過去の成功体験を破壊(否定)し、新たな価値を創り続けていきます。