トップの世代交代でDX戦略は縮小された

グループを動かすには、実に7年の歳月を要しました。IT業界から来た新参者が周りの信頼を得て経営者や幹部を説得するまでに、それだけの時間がかかったのです。大きな組織ということもあり、水面下の抵抗には随分悩まされましたが、信念を曲げずに行動し続けた結果、協力者は少しずつ増えていきました。グループ戦略として承認された2年後の2015年には、リアルとネットを融合した新しい小売業のスタートを切ることができました。

その後、トップ層が世代交代し、経営の方向性が大きく変わりました。経営スタイルも「創業型リーダーシップスタイル」から「サラリーマン合議スタイル」へと変わり、短期成果を重視する日本型リスクマネジメント経営へと転換していきました。「選択と集中」という方向性の中、長期戦略であるデジタルの取り組みは縮小されていきました。

経営者の強い決意がなくては、DXを起こすことはできません。その後DXの時代が到来したことを考えると残念に思えます。私は、グループを離れる決断をしました。

方法を考えるのは決断してからでいい

現在は、企業のDXを支援する仕事を行っています。これらはいずれも、リスクを引き受け、挑戦してきた私の歴史です。今振り返ると、信念を持ち、リスクを背負って行動したことが、周囲の人を動かしたのだと思います。おかげで、当時の経営者や幹部をはじめとする周りの方々から、多大なご協力、ご支援を得ることができました。当時の皆さんには感謝しかありません。

鈴木康弘『成功=ヒト×DX デジタル初心者のためのDX企業再生の教科書』(プレジデント社)
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もちろん、全てが成功しているわけではありません。失敗もありますが、どの経験も自分の血肉となり、ノウハウとなっています。苦労もありましたが、今ではそれまでの全てに感謝しています。

皆さんも、ぜひ信念を持ち、積極的にリスクを背負って行動してほしいと思います。そして、ぜひ、日本のDXを担うリーダーとして、経営者を動かし支えてください。そして、もしチャンスに恵まれれば、自らが経営者となって、DXの実践に挑戦してほしいと思います。

米国元大統領のエイブラハム・リンカーンの言葉に「そのことはできる、それをやる、と決断せよ。それからその方法を見つけるのだ」という名言があります。経営者は、まず、何はともあれ決断することが大切です。方法を考えるのは、それからでもよいのですから。

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