ニッポンの防衛産業は簡単には復活できない

3つ目は、日本の防衛産業が極めて「お寒い」状況にあるという「穴」である。

近年、自衛隊向けに砲弾や装甲車両を提供してきたコマツや、機関銃などの製造を手がけてきた住友重機械工業など大手メーカーが相次いで防衛装備品の製造を打ち切った。

コマツで言えば、もともと防衛装備品の売り上げは280億円程度と、全体の売り上げの1%にすぎなかったところに、装甲車両にも排ガス規制を適用しなければならなくなり、技術開発費がかさむようになったためだ。

どうにか新型の装甲車両を開発したとしても、三菱重工業など他社や外国のメーカーに防弾性能などで見劣りすれば採用されない。これではコストを回収できない。

住友重機械工業の場合も、国産の機関銃は少数生産で外国製の5倍近い価格になってきた。それも多くがライセンス生産のため利益率が2%程度と低いのに加え、日本には、紛争地域への武器輸出などを禁じた「武器輸出禁止3原則」という縛りがあるため、顧客は自衛隊に限定される。「これではやってられない」と判断するのも道理である。

日本の防衛力強化で潤うのはアメリカだけ

そんな中、岸田首相は、国会での論戦で、反撃能力(敵基地攻撃能力)保持のために、今後5年間で、アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」を大量購入(最大400発)すると繰り返し述べてきた。

これで儲かるのはアメリカだけだ。日本の防衛産業には何のプラスにもならない。最新型であるため、使用訓練もアメリカに一任し儲けさせることになる。

政府は、日本の防衛産業に対し研究開発を支援する方針だが、今の状況で、「12式ミサイル」の射程を長くするとか「極超音速誘導弾」の開発を急ぐとか、政府が目指しているような技術開発が容易にできるとは到底思えない。

ちなみに韓国は、国を挙げて防衛産業の発展を後押ししている。2022年9月、ソウル近郊で開かれた防衛産業展を目の当たりにしたが、世界約50カ国からバイヤーが押し寄せ、活況を呈していた。

展示品の大半はアメリカの兵器のジェネリック版だが、高性能で価格は安い。しかも韓国側は、メーカーに補助金を出すだけでなく、防衛装備品を売る相手国の財政状況や地域事情を調査する支援までしている。至れり尽くせりのサービスで、「さすが、西側の兵器工場と言われるだけある」と感嘆したものだ。