初代日産リーフの5倍程度のバッテリーを搭載

私の考えるテスラのもうひとつの大きな魅力は、航続距離とバッテリー容量の比率を示した電費性能です。EVの航続距離を伸ばしたいのであれば、バッテリーを多く搭載する必要があります。例えば、初代日産リーフに搭載されていたバッテリー容量は24kWhでしたが、ルーシッドのAirに搭載されているバッテリー容量は、およそ118kWh。初代日産リーフの5倍程度のバッテリーを搭載しているからこそ、航続距離を大きく引き伸ばすことができているのです。

他方、バッテリーを大量に搭載することによって、その分だけ車両重量が増してしまうという問題が起こります。さらにレアメタルなどの貴重な原材料が使用されているバッテリーを大量消費してしまうということは、必要となるバッテリーを生産できずに、EVを大量生産できなくなる危険性が出てきます。つまりEVの生産にあたっては、この航続距離とバッテリー容量のバランスをうまく取っていかなければならないのです。

電気代の節約に寄与する電費性能が高い「モデル3」

高橋優『EVショック ガラパゴス化する自動車王国ニッポン』(小学館新書)

バッテリー容量を減らしながら、かつ航続距離を最大化するためにEVの車両側の設計で可能なのが、電費性能の向上です。同じバッテリー容量でどれほど長い距離を走行させることができるのかという指標が電費ですが、そのEPA基準をベースにした電費性能が最も高いのが、ずばりモデル3です。さらにEVのSUVセグメントでトップに君臨しているのが、ずばりモデルYなのです。

テスラはただ闇雲に航続距離を伸ばすのではなく、ユーザーの需要に見合うだけの航続距離を達成しながら、同時に搭載バッテリー容量を少なくすることによってより大量のEVを生産することができます。またユーザーにとっても、電費性能が高いEVは同じ航続距離を走行しても使用電力量を抑えることができるので電気代の節約にもつながりますし、車両重量を軽くすることができるのでタイヤの摩耗を抑えてタイヤを長持ちさせることにもつながるのです。

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